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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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68 :げらっち
2024/05/08(水) 13:48:33
罹災した食堂を貸し切って、カレーの大喰い対決が始まった。
楓が吞気に佐奈に挨拶しているのが聞こえてきた。
「あたし伊良部楓。七海ちゃんのルームメイトで親友! よろ!」
「鰻佐奈です」
「うさぎ?」
「うなぎです」
私の口の中はカレーで満杯だった。
最初は美味しく感じた激辛カレーも、食べているうちに舌が麻痺してくる。
もはや食事というより、ぐちゃ混ぜのルゥとライスをスプーンで口に運ぶだけの作業となってしまっていた。
そんな中で何とか皿を平らげる。
「おかわり。450」
厨房のおばさんは私たちの喰いっぷりを見るのが嬉しいのか、ノリノリでおかわりを用意してくれる。
大喰い対決など食糧の無駄だと思われるかもしれないが、食堂での乱闘などと比べればましだし、そもそも残飯になってしまう分を貰っているだけなので、むしろエコだ。不味そうに食べてしまっているのが申し訳ないが。
大盛りのカレーが、ドンッと置かれる。
休まずに食べ続けなくては。少しでも気を緩めれば、途端に、背後に迫る満腹に追いつかれ、負ける。
「なかなかやるブヒね……」
横を見ると、豚がカレーを口に運んでいる。相手は食べて寝る事しか能が無い巨漢なだけあって、よく食べる。
でも相手のペースも落ちてきた。どうやら辛口が苦手と見える。汗をダラダラ流しながら懸命に口を動かしている。
「カレーは、飲み物だから」
私はカレーをハムスターの様にパンパンに頬に詰めて、多量の水で胃に流し込んだ。
苦しさのあまり涙目になった。
「七海さん!」佐奈が叫んだ。
空き容量を少しでも確保するために、立ち上がって、膨満した腹をさすった。胃の内容物が降下していくのがわかる。
佐奈に「まだいけるよ」と、ピースマークを送った。
……本当は、もういけない。これが終わったら1週間はカレーを食べたくない。見るのも嫌なくらいだ……
やがて豚は苦しそうな声を上げた。
「1400完食……ブヒ……」
なんてこったい、700を2杯も食べたのか。相手のペースが落ちていると見ていたが、豚の大口では一口あたりの量がまるで違うことを考慮していなかった。やはり男と女では、胃袋のキャパシティもだいぶ違う。
これは厳しい勝負だ。私は今の3杯目を食べ終わっても1350。追いつけない。
どうしようか。勝負を仕掛けておいて負けるのはハズカシイ。それに、佐奈への謝罪を引き出すことができない。
ガンバレ、七海。何か手があるはずだ……
私は箸休めに、福神漬けとラッキョウを食べた。
平坦な味では続かない。こういったものを合間に挟むことで、少しでも舌を蘇生させる。
「ん?」
私は豚の、カレー皿を見た。
勝機あり。
私は箸を持った手を、豚に向けた。
「ラッキョウもちゃんと食べなきゃダメだよ?」
「ブヒ!?」
彼の皿には、取りこぼしの米粒と共に、ラッキョウが残っていた。
「あ、ラッキョウ嫌いなんだ。あなたの負けね。残すのは大喰い選手として失格だから。だよねおばさん」
おばさんは怒りの形相で、今にもキッチンジャーに変身しようとしている。キッチンジャーに敵う生徒など居ない。
「こ、降参ブヒ~~~~!!!」
豚は無条件降伏した。
「はい、私の勝ち。佐奈に謝ってもらうからね」
「やったね七海さん!」
私は駆け寄った佐奈とハイタッチする。その瞬間、私のお腹がキュルキュルと鳴った。
「う、トイレ……」
つづく
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