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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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82 :げらっち
2024/05/10(金) 10:46:03

 私は魔法クラスのテスト会場に着いた。
 いつもエキセントリックな教室は、今日は整然と机が並べられていた。新入生たちは自席に着いて最後の猛勉強に取り組んでいる。漂う緊張感の中に踏み入れると、喉の渇きが伝播し、落ち着かなくなった。もう一度トイレに行こうかな。
 何を緊張してるんだ私。こんなのはちょっとしたお試しテストに過ぎない。重要なのはこれから何を学ぶか、だ。こんなペーパーテストごときで腹痛を起こしていたんじゃ3年間を生き抜けない。
 見ると、ぐるぐる眼鏡の男子が、手に人人人と書いてべろべろ舐めていた。相当緊張しているようだが、魔法クラスの癖に陳腐なまじないに頼るとは滑稽だ。彼のお陰で逆に緊張が解けてきた。

 出席番号1番の定位置、上座の一番前の席に座る。生徒たちは復習に必死で、私には目もくれない。
 ノートを開こうとして、やめた。この数分間で勉強できることなんてたかが知れている。できるだけの勉強はしたのだから、後はただ待つだけだ。


 やがて、金髪の女性が入室した。
 ウェーブした長髪は輝いており、秘めたるイロも同じく金。珍しいイロだが、いつみ先生の光りと比べたら大したことない、ただの金メッキだ。
 その女はテスト用紙を教卓に置いた。テスト監修はいつみ先生ではなく、この見たことの無い先生なのか。
「みなさん、ごきげんよう。初めましての方は初めまして。魔法クラス首席、ミコゴールドの金閣寺躁子(きんかくじそうこ)です」
 げ。大人の女性に思えたが、センパイだったのか。金閣寺は巫女の装束を着ていた。
「おほ。かわいい後輩ちゃんたち、首席というのが何かわからない子も居るかもしれないので、説明しますわね。首席とは、そのクラスで最も優秀な生徒の事です。大抵は3年生から選ばれます。先生の補佐をしちゃったりなんかします。今日は赤坂先生は臨時の仕事でおられないので、わたくしがテストを取り仕切ります」

 いつみ先生のキラキラが見たかった私は、ちょっと失望した。

 テスト用紙が配られた。

「皆さん、これは単にあなたたちの適性を図るテストです。リラックスして解いて下さい。但し、リラックスし過ぎて、寝落ちすることのないようにね? もし寝てしまったら、謝罪して貰いますよ? つまり……ブフッ」
 金閣寺は、何故か、堪え切れなくなったように、吹き出した。

「つまり……睡魔に負けてスイマせんでした、ってね。ギャッはっはっ!!」

 金閣寺は唾を撒き散らして一人で大笑いしていた。教卓寄りの席じゃなくて良かった。
 まともにしていたらそこそこ美人なのだろうが、ババ臭い喋り方と、この変な性格で、損してるなこのパイセンは。

「ふう。それでは開始します」
 語尾のしますにちょうどかぶさるように、始業のベルが鳴った。
 生徒たちが一斉に答案用紙を表に返し、問題用紙を開く、乾いた音の重奏。私も問題を解く姿勢になる。

 リラックス、ねえ。
 無理でしょ。
 と思いつつ、ふうと深呼吸し、肩の力を抜いてみる。

 あれ? ちょっと楽だ。

 体の緊張が取れてきた。

 私は水色の筆箱から、シャープペンを取り出した。漫画を読むように気楽に問題用紙に目を通す。
 ん?
 テスト問題の文字が、ぐにゃとブレた。
 全身が弛緩し、手がシャープペン如きの軽い物すら持っていられなくなり、取り落とした。カラン。
 深呼吸の効能が凄まじく、緊張がほぐれ過ぎたのだろうか。そんなはずはない。

「!!」

 アレが、やってくる。
 全身が保冷材のように冷たく、ガクガクと細動している。
 何でだ。ちゃんと薬は飲んだはずなのに。薬さえ飲んでいればこの数年間、アレはこなかったのに。何でこんな時に。
 なんで
 だが思考はカイテンしてそれいじょうすすめなくなった
 めのまえがぐるぐるぐるまわり、まよこにくずれるようにたおれた

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