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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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85 :げらっち
2024/05/10(金) 10:57:12

 屏風の様なパーテーションを押し開けて、いつみ先生が現れた。
 接近に気付いていなかった楓たちは驚いてワッと叫んだ。

「七海、大丈夫かい? テストの時は居てあげられなくてすまなかったね。ちょっくら怪人退治の仕事が入ってね」
 先生は朗らかに話しているが、何気にスゴイことを言った。楓が「怪人ー!?」と言ったがスルーされた。
「お見舞いに来たよ。これでも食べてくれ」
 先生は真っ赤なリボンの施された真っ赤な箱を、ベッド脇の机にドンと置いた。軽やかな手つきでリボンを解き、蓋を開ける。
 中には、チョコがずらり並んでいた。
「神ー!」
 楓たちは大はしゃぎ。
「うまそうブヒ~~~!!」
「ちょっと、相撲取りにお菓子はご法度でしょ? それだからだらしなく太るんですよ」
「うるさいブヒ!」
 しかし公一は冷静に言う。
「おいおい、これは七海へのお見舞いやろ? お前らが食べてどうすんねん!」
「あ、そうでした」
「ブヒめんなさい」

「いや、これはきみたちチームへのプレゼントだ。みんなで食べていいよ♪」

「よっしゃ!!」

「赤坂先生、困ります! 勝手に患者に差し入れをされちゃあ!」
 ヤブイが戻ってきて、憤慨していた。

 私は甘い物が好きではないが、体が糖分を欲していたようで、手を伸ばしてチョコを取り、いただきますと頬張った。
 甘い。元気が脳に全身に染み渡っていく。パクパクと競うように食べ尽くした。私が17個、豚が14個、楓が10個、佐奈が6個、公一が2個くらい食べた。
「公一くん食べなさすぎ!」
「ピーナッツアレルギーなんや!! ナッツ使われてないチョコ探しとったらみんなどんどん喰いはるんやもん!」

「さて、腹ごしらえをしたところで七海」
 いつみ先生が言う。
「校長が、きみに会いたがっている」
「え? 校長?」
 寝耳に水というか熱湯を流し込まれたようなものだ。テスト中に倒れた生徒に会いたがる校長とは何なのか?
「すげーじゃん七海ちゃん! 校長センセなんて滅多に会えないよ! 無料レストランの数増やすようにリクエストしてきてくんない?」

「立てるね?」と先生。

「はい、立てます」
 それはもうバッチリだ。私はベッドから立ち上がった。
「じゃあ行こう♪」
 先生は私の手を掴んだ。不意打ちにビクリ。太陽に触れられては、私の手は焦げ付いてしまう。
「困りますったら!」とヤブイが叫んでいる。
「おやおや、邪魔はしないほうが良い。校長がお呼びなのだし、七海は僕のクラスの生徒だ。僕の好きにさせてもらうよ♪」

 なかなか自由人な教師だ。
 私は先生に連れられ、保健室を出た。


 私はいつみ先生とエレベーターに乗った。
 機械クラスに向かった時とは違い、下ではなく上に向かっている。中央校舎は10階建てとなっており、非常に高い。その最上階に校長室があるという。

 私はちょっとムカついていた。
 先方が私に会いたがったのであって、逆ではない。それならば先方のほうが私に会いに来るべきだ。いつみ先生を呼びに来させて、仮にも発作で倒れた病人を、こんなに遠い校長室に来させるとは、校長だからといって偉ぶり過ぎだ。
 私は目上の人に対しても間違っていると思えば文句を言う主義だ。校長と対面したら、つい不遜な言葉を吐いてしまいそうだ。でもいつみ先生は、そんなところも買ってくれるかもしれない。ともかく、相手が戦隊学園の校長という大物であれ、いつも通りの自分で臨もうと思った。

 最上階に到着し、エレベーターが開いた。
 先生が開ボタンを押し、私が先に出た。窓の無い短い廊下の先に、大仰な扉があった。戦隊証と同じく、戦隊学園の校章が描かれている。先生は扉の脇についている呼び鈴を鳴らした。
「緊張しなくていいよ」
「元よりそのつもりです」
 先生はクスッと笑った。その後で、
「七海、今から対面するのは戦隊の祖と呼ばれるお方だ。わかっていると思うが、礼節には十分注意するように」
 と言った。

 ちょっと信じられなかった。
 あのいつみ先生が、そんなことを? 常識という縄に束られても、即座に縄抜けしてしまうような柔らかさを持ったいつみ先生が?
 あなたも上の者には媚びるタイプなのか?

 私は先生を軽く睨んだ。
 すると先生は、私の頭をポンポンと叩いた。少しでも和ませるため?
 私は佐奈の真似をして、言った。

「やめて。頭触られんの嫌いなの。子供扱いしないで」

 いつみ先生は、目を細めた。
「本当に面白いねきみは♪」
 物凄くイジワルそうだった。

 ほどなくして、重そうな扉が自動で開いた。

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