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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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87 :げらっち
2024/05/10(金) 10:59:44

「七海は特別な力を持っている。テストなんかじゃ実力は測れない」
 いつみ先生がそう言った。
 校長の前で、学力に対するアンチテーゼを掲げていいのか?

 しかし、校長はおかしそうに笑った。
「そうだそうだ、クリームソーダ!」

 あ、おやじギャグだ。

「くだらねえ♪」
 いつみ先生と校長はあっはっはと笑った。この2人仲良いのか。私も「あはは……」とお寿司のバラン程度に意味の無い苦笑をしたが、本心は全然笑っていなかった。この空間で笑っていない人間は私とヘルパーのみだ。ヘルパーが人間ならの話だが。
「テストは学校の風物詩で、少年少女の思い出だ。10年もすればテストで四苦八苦した思い出が輝く。ただそれだけだ」と校長。
 私はつい口走った。
「え、それだけなんですか?」
「いやいや。実際の理由は他にもあるがね。戦隊連合が、テストを定期的に実施しろとうるさいのだよ。理事長の天堂任三郎はテストでふるい落とした生徒を退学にしろとまで言う。可愛い生徒たちをそう簡単に退学などするものか」

 天堂任三郎といえば天堂茂の「父上」だ。
 校長が奴の自慢のお父上をシニカルにあしらっているのを見て、私の気分は晴れ晴れとした。

「今後の《イベント》こそが、真の実力を測る試金石となる」
「おやおや校長、生徒1人だけに情報を開示するようなことをしていいんですか?」といつみ先生。
「何を今更。君こそ彼女をヒイキして個人レッスンをしておるのだろう。下手をしたら減給ものだぞ?」
「あ、バレてましたか♪ ただでさえやっすい給金を減らされちゃ困るなあ」

 いつみ先生、随分と失礼なことを言っている。
 ギリギリな会話を楽しむのがこの人たちのたしなみなのだろう。身体障害を持つ人は、自分が動き回れない分、他者から世間についての情報を得る。つまりお喋りを楽しみに生きているのだ。

 校長は言った。

「今月から一大イベント、《戦ー1グランプリ》が開催されます」

 戦ー1グランプリ?
 お笑いの賞レースだろうか。
 いつみ先生が脚注を付ける。
「学園内の戦隊同士で総当たりし、ナンバー1の戦隊を決める競技だよ。今年が初の開催となる」
 学園総当たり? つまり2・3年も含むということだろうか。それなら勝ち残れる気がしない。

「戦隊同士は、いつどこで戦ってもいい。正々堂々勝負するのもよし、卑怯な手を使ってもいい。寝込みを襲ってもいいし、食事中でもお風呂の中でもOKさ♪ 負けたら敗退となり、最後まで残った戦隊が優勝となる。あ、もちろん負けても退学にはならずに授業は受け続けられるよ。イベントから脱落ってだけだ。期間は夏休み前までなので、その間隠れてもいいし、ガンガン攻めてもいい。どんな手を使ってもいいんだ。ま、殺すのはナシだけどね」

 ルールを聞くうちに、少しずつワクワクしてきた。
 どんな手を使ってもいい、か。
 弱小のコボレンジャーでも、勝ち進めるかもしれない。いや、ここは貪欲に、優勝を狙ってもイイかもな。

 校長は震える手を持ち上げて、ガッツポーズを見せてくれた。
「実力を見せてくれ。虹光戦隊コボレンジャー」

 こんな私のこんな一戦隊など、取るに足らない存在と思われている、そう決め付けていた。だが校長先生はきちんと私の名前、私の戦隊名を覚えていてくれた。
 この人は尊敬できる人だ。この学園で学ぶことは、意義のある事だ。
 私は二つ返事する。
「はい!」

 その時、いつみ先生が小声で言った。
「実力を証明する……」

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