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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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88 :げらっち
2024/05/10(金) 11:05:09

 私は退学などにならず、学校生活は続いた。

 大抵の戦隊は同じクラスのメンバーでユニットを組んでいる。でも私たちコボレンジャーは、例外的に全員クラスが違う。各クラスの落ちこぼれと呼べる者たちの集合体だからだ。つまり、顔を合わせるのは必修科目の時と、放課後のみになる。
 放課後、部活動のようにコボレンジャーの皆と集まる時間が楽しみだった。

 私は廊下をスキップして、和室の引き戸を開けた。
「よぉ七海!」
「あれ? 一番乗りだと思ったのに」
 室内には漫画を読む緑ジャージの公一の姿があった。9枚の畳が敷かれた、程良い広さの部屋。真ん中には茶ぶ台が置かれている。
 中央校舎7階にあるこの和室は、かつて茶道戦隊ウラセンジャーや百忍一首カルータファイブが使っていたらしいが、そういった戦隊が居なくなったため、いつみ先生がコボレンジャーの部室として使用することを許可してくれたのだった。
「忍術クラスは昼ないねん!」
「あ、そだったね」
 私は教科書の入ったバッグを置くと、黒い靴下を脱ぎ捨てる。素足で畳を踏むと心が静まる。
 公一は私の25.5センチの足をじろじろ見ていた。
「見んなよ、スケベ」
「え? み、見とらん見とらん! 意識し過ぎや!! ていうか少しも見ちゃダメとかどういう扱いやねん!」
 彼は焦って漫画に視線を落とした。
「何その本」
「佐奈が貸してくれたんや」
 和室の隅っこに、寝そべってパソコンに向かう制服姿の佐奈が居た。例によって小柄なので、公一の影に隠れて見えなかった。
 私は「お疲れ様ー」と声を掛ける。でも佐奈は返事をしなかった。
「お取込み中みたいだね」

 そこに、引き戸を大きな音を立てて開け、4番乗りが入ってきた。
「うぁーめっちゃ疲れた! 糞つまんない名乗りの作法で居残りさせられた!」
「お疲れー楓」
 楓は青いネクタイをほどきYシャツを第二ボタンまで開けており、みだらな格好だ。
「おつかれい七海ちゃん」
 楓は入室するなり畳に寝転んだ。公一の膝枕に頭を乗せそうになったので、公一は急いで避けた。
「お前らは今日もう終わりだからいいやん! 俺はこの後授業やで! めっちゃしんどいねん!!」
「ああ~公一くんはそうだったねぇ。サボっちゃえば?」
「そういうわけにもいかないねんアホ」

「ブヒ~! お待ちかね!」

 豚がドスドスと入室した。100キロ超の巨体に踏みつけられ、畳がめこっとへこんだ。
 彼と共に、食欲をそそる良い匂いが部屋の中に飛び込んできた。彼は大きな土鍋を持っていた。

「豚ノ助特製ちゃんこブヒ! 僕の地元から送られてきた魚介類をた~っぷり使ってるブヒよ!」

 豚は土鍋を茶ぶ台の上に置き、蓋を開けた。
 豆腐や白滝、野菜と一緒に、ぷりぷりの海老や帆立が煮込まれているではないか!

「わあ!」
「すげえ!」
「うっまそ!」
 私たちは目を輝かせる。

「これで1日の疲れを取るブヒ!」

「俺はこれから疲れるんやけどね」と公一。
 私たちは5人そろって鍋を囲み、「いただきまーす」と詠唱した。小鉢は使わず直接箸で突っついて食べる。
「うま! 最高や!」
「佐奈ちゃんもたっぷり喰って大きくなるブヒよ」
「ありがと……って、暗にチビって馬鹿にしてる! 七海さん、こいつ馬鹿にしたよ!」
「まあまあ」
 私は海老を掴み取り、まだ熱いまま噛み千切る。弾力のある至高の歯応え、優しい味付け、海の香り。最高だ。
 皆、はふはふと幸福な咀嚼音を鳴らしながら味覚を満たしている。そうだ、ここらでローブローを決めてやるか。

「みんな、テストの順位どのくらいだった?」

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