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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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99 :げらっち
2024/05/10(金) 12:01:29

 ツーアウト(私の好守備によるもの)を迎える頃には、ホームランジャーは私たちに33点という大差をつけていた。


 ゴーグルの下に、目を真っ赤にしている公一の無残な顔が見えた。
「公一、代わろっか?」
「もっと早めに代わって!?」

 私はマウンドに立つ。

 打席にてバットを構えるのはレッドピッチャー、野中球その人だ。
 しかも塁に5人出ている。ナンセンスな状況だが、ホームランジャーはどんどん塁に出るため一塁に2人、二塁に1人、三塁に2人居るのだ。この状況でホームランが出れば一気に6点入ってしまい大変不利だ。

「悪いけど、ここで負けるわけにはいかないから。どんな手を使ってでも勝たせてもらう」
 私は振りかぶり、球を投げた。
 公一といい勝負の遅い球だ。甲子園の只中に始球式をするような物だ。
 野中は余裕綽々というようにバットを振る。今だ。

「フリーズ」

「あれ?」と野中。

 バットは空を切っていた。
 球はバッターボックスのほんの手前、空中でぴたりと停止していた。私が魔法で球を硬直させたのだ。メルトと唱えると球は動き出し、豚のミットの中にきちんと収まった。
「ストライク!」
「魔球か!?」

 続く2投目。
 野中は、次も同じ戦法でくると思ったのだろう。警戒し球を見送った。チョロいな。
「ツーストライク!!」
 球はまっすぐに豚のミットへ収まった。
「七海ちゃん、良い球ブヒ~」
「おのれ小豆沢七海、なかなかやるではないか……」

 3投目。
 野中は主将の意地で球を打った。ま、それも狙いなのだけど。
「ブリザード!」
 私は吹雪魔法で空中の球を操作した。球は私のミットに吸い寄せられるようにして落ちた。私はそれをキャッチ。
「スリーアウト、ようやくチェンジ」

 野中は私の居るマウンドにずかずかと突き進みながら叫んだ。
「魔法を使うとは卑怯だぞ!!」

「どんな手を使ってもいいから。そもそも、野球が不得手な私たちに一番に勝負を仕掛けてくるあたり、あなたたちも球児としての潔さは無いんじゃない?」

 野中は何も返せず、うつむいた。
 私はマウンドを降り、野中が入れ替わりでそこに立つ。攻守交代、次のイニング。


 2回表、コボレンジャーの攻撃は私から。
 野中が球を投げた。さあショータイムだ。初めての太陽の下の白球勝負、魔法でホームランを打ってやる!
「スパイラルスノウ!!」
 パコーンと気持ち良い音が鳴り、硬球は高く飛んだ。飛距離は魔法のアシストを受け伸びた。しかし同時に出塁せねばならない。走りながら飛ぶ球に魔法の意識を傾けるのは至難の業で、1年生の私が勘だけで行うには経験不足であり、途中でボールが魔法の届く範囲を超えて圏外になった。それでもボールはかなり遠くに飛んだ。私は足は余り速くないが、二塁か、最低でも一塁までは行けるはず……

 すると野中はとんでもない指示を出した。
「イエローファースト!! 塁を破壊しろ!!」
「うっす!」
 一塁手は何故かバットを持っていて、それを振り降ろし、ファーストベースを真っ二つに破壊した。スポーツマンシップを踏みにじる行為だ。しかもそいつは塁の残骸を放り投げてしまった。
 私はようやく一塁跡地に辿り着いたけど。
「ちょっと! 塁を踏めないじゃん!」
 イエローファーストは知らんプリしている。マウンドの野中が大声を張り上げた。
「これでお前らは点を取れない! 俺たちの勝利が決まりだ!! どんな手を使っても良いんだろ? いーだ!!」
 大人げない。というか野中の性格が豹変している。
 そのうちにゴールドレフトがボールを取ってきて私をタッチアウトにした。なかなか泥試合になってきた。

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