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62.長文コンクール
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692 :すき焼きのタレ
2021/04/06(火) 13:07:26

数日前───

「おおお前誰だ!」
パソコンが乱雑に床に散らかっている。
白かった部屋は赤黒い血で染まり、ただの汚い部屋と化した。
「お静かに」
「喋るな!動くな!殺すぞぉ!」
男が拳銃を構え、返り血まみれのハルを脅す。
しかしこの日この場所で軽く10人を殺した彼女にとっては、男の脅しは単なる喚きにしか聞こえなかった。
「死ね!」
男がハルに向かって発砲する。パソコンが次々と砕け壊れ、破片が彼女の傍を綺麗に掠めた。
「そんなに適当に打ったら───」
「はぁ!?……あっ……」
男の挙動が突然おかしくなった。弾切れだ。ただ一つの武器を失った男は一気に焦り出す。その間にもハルは少しずつ確実に間を詰めていく。
「年寄りしか食い物にできない詐欺なんて時代遅れですよ」
その瞬間、男が拳銃を構えた。
「まだ残ってるよ、バーカ」
耳を劈く銃声。部屋の空気が凍る。

轟音に驚き一瞬目を瞑った男は目を開けたが、彼の思いとは違う光景が広がっていた。
ハルがパソコンの破片を盾にして弾を防いでいた。
「だから言ったじゃん。適当に打つなって」
「もももももうなななない」
男の頭が真っ白になる。慌てて男は後退し、パソコンの配線に足を引っ掛けた。
情けない声を上げながら男の体が中を舞う。
「自分の武器に殺られる気持ちはどう?」
男が最期に見たもの、それは悪魔の顔だった。

*****

「おかえりなさいませ!お嬢様」
山を少しのぼった所にある大豪邸にハルは住んでいた───尚、この山もハルの家の私有地である───。
いつもは使用人たちに笑いかけるハルだが、今日は彼らを気にも留めず奥の社長室へと向かった。
「おかえり春佳、今日は標的が多くて楽だっただろう」
「”殺してはいけない人がいない”っていうのはすごく助かったよ」
「それは良かった───さすが”日本一の殺し屋”だな」
ハルの父でもある”社長”は腕を組み笑う。
ハルはこれまで、日本だけでなく近隣国で数多くの人々や組織を『1人で』壊滅させてきた。
「どうも。ところで……何?『学校に行け』っていうのは」
落ち着いて話していたハルはいきなり目の色を変えた。
”社長”はハルの反応に気付き、待ってましたと言わんばかりに話を始める。
「この山を下りたところに、大きい高校があるのは分かるよな?そこの生徒の殺害依頼がきてるんだ。だが金持ち高校なもんで、警備がかなり厳重で殺害が難しい。お前は一般的には高校生だ。そして”あの家”にいたことで知識もある───どうだ」
「……準備は出来てるの?」
「もちろん。転校のことについては適当にヨーロッパからの帰国子女ってことでいいだろ」
「本当に適当だ……」
こうして、ハルの潜入作戦という名の学校生活が始まるのだった。

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