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694 :すき焼きのタレ
2021/04/06(火) 13:08:31
2-A1教室。
「ヨーロッパから来ました。植木春佳です」
パチパチと拍手が起こる。
「今日からは2人の転校生・植木春佳さんと高田 夏輝(たかだ なつき)さんも一緒に、このクラスで学んでいきます。みなさんも仲良くしてね……あと植木さん、遅刻は二度とないように」
ハルが空いている席に座ると、隣の席に座るいかにもサッカーをしていそうな男子生徒───もう1人の転校生、高田夏輝が小さな声で話しかけてきた。
「この学校のヒエラルキーについては知ってる?」
「え、えーとクラス分けのやつでしょう?」
突然話しかけられたハルは少し驚きながらも答える。
「ああ。ちなみに、転校生は基本A1からスタートらしいんだけど……今日、俺達と同学年の奴らが2人”T3”クラスに入ったそうだ」
夏輝───ナツの様子がどこかおかしい。
「よっぽど賢い人なんだね」と言おうとしたハルの言葉を遮るかのように、ナツが突然立ち上がった。
「突撃しようぜ、T3クラス」
「お断りします」
クラス内がざわつく。
ナツは頭を撫でながら「ハハハ」と笑い座った。
「嫌と言っても連れて行くからな。あとお前、ヨーロッパから来たって嘘だろ」
「え、ばれた?やっぱり無理があったか……」
「何で嘘ついてまでこの学校に来たかは知らないが……すぐに分かったよ。なんせ俺はヨーロッパからやってきた、帰国子女だからな」
*****
昼休み。
ハルは食堂にやってきた。食堂は校舎から離れており、かなりの広さだった。焼けた肉の香ばしい匂いが漂い、生徒たちの疲れを癒す。
”社長”からは『コロッケ定食とソフトクリームを食え』と伝えられている。ハルはとりあえずそれを食べることにした。
「コロッケて───」
「すいませーん!焼きそばパンくださーい」
女子生徒の2人組が割り込んできた。ハルと微妙に制服が違う。どうやら”T”クラスの生徒のようだ。2人組がハルの方を向く。
「ごめんね。私達急いでるからw」
ハルはこの学校に来て初めて、人を殺したいと思ってしまった。
───いけないいけない。”標的”以外を殺すのは駄目だ。
「え」
ハルの心の声が漏れたのではなかった。心の声を見透かされていた。
カウンターの方を向くと、1人の”おばちゃん”がニヤリと子供のような笑みを浮かべていた。そして、頼んでもいない料理をハルに渡し、耳打ちした。
「はい。コロッケ定食とソフトクリーム。……毎日食べると太るから気をつけてね」
*****
「美味し!」
テラス席で思わず声が漏れる。
ハルは毎日家で豪華な食事をしているが、食堂の料理はそれに匹敵する美味しさだった。ハルは普通に料理を堪能していた。
コロッケ定食を一瞬で平らげ、ソフトクリームを食べ始める。
バニラが口の中でふんわりと溶けていく。濃厚な牛乳の香りが一気に広がる。そのままサクサクのワッフルコーンまでバリバリと食べ尽くした。
「学費500万円はこの料理のためなのかも……」
至福のひとときを過ごしていたハル。
しかし、ソフトクリームに巻かれていたワッフルコーンスリーブの裏側をチラッと見ると目つきが変わった。
そこにはボールペンで”おばちゃん”からの依頼内容が書かれていた。
【こんにちはハルさん。おばちゃんは長期契約の依頼人です。御駄賃は会社の方に送ってあります。早速始めてね。毎日ここに来てね。まず最初の子は
3年生の津島季世】
「コロッケで胃もたれしそうだけど……持ってくる薬間違えちゃったな」
ハルはポケットから薬を取り出し、1つずつ丁寧に潰し始めた。
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