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695 :すき焼きのタレ
2021/04/06(火) 13:08:58
午後の授業が全て終了し、部活を始める生徒と帰る生徒が行き交う。
ハルは鞄を背負い、1人でTクラス棟校舎に向かっていた。そのまま、3年生の教室へ向かう。しかし3年生の教室内には誰もいなかった。
校舎に入り、階段を上がっていく。しかしどの教室に入っても”全く”人がいなかった。任務をこなすのには好都合だったが、逆にその静けさが不気味でもあった。
ついに最上階・4階までやってきた。
「やあ」
突然真後ろから声がした。季世が手を振っていた。
自分以外に人の気配は無かったはずなのに背後を取られていたハルの危機感が一気に増していく。
「どうしたの?こんなところで」
「あ、いや……ちょっとついて来てもらっていいですか?」
「もちろん!」
階段を降りるハルの後ろに季世がついて歩く。
3階。
どの教室も扉はピタリと閉まっていた。
「この階から叫び声が聞こえたので……何かあったのかなと」
「ふーん。4階に行くより下に降りる方が人はいたと思うけど」
───既に勘付かれているのかもしれない。
ハルはとある教室の前で立ち止まった。
「多分ここから聞こえたような気がするんですよね……見てもらえませんか?怖いので」
「大丈夫だ!一気に開けるぞ!」
ハルが離れて見守る。
扉を勢いよく開けた季世が異変に気付き上を見た瞬間───粉まみれの黒板消しが直撃した。
「……こんなに汚れるのは久々だなぁ……チョークって……こんな苦い味するんダネぇ……」
季世は口の中まで真っ白になった顔を引き攣らせた。
扉は勢いよく閉められた。
ハルはもう一つの扉から教室に入る。赤黒く彩られた教室の壁に季世が寄りかかっている。
窓から入ってくる光が、教室の赤黒さをさらに引き立てている。
「血まみれみたいで気味の悪い部屋ですね」
ハルにとっては”本物”との違いに気味悪さを感じたのかもしれない。
「確かこの部屋は今日オ化ケ屋敷をしていたはずだ……下校時刻を過ぎたら素晴らしい『清掃員さん』が元の綺麗な教室に戻すんだろうナ」
ハルは黙って端の机に向かう。
そして引き出しから筒状の物を取り出した瞬間───季世のすぐ傍に矢が刺さった。
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