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696 :すき焼きのタレ
2021/04/06(火) 13:09:35
「オイオイやめてくれよ、出会って初日で殺しにくるなんて」
「別に”今”殺そうとは思ってませんよ。この中に入ってたから打ってみました」
そう言いながら矢を取り出し、また吹き矢を打つ。今度は避けるまでも無かった。しかし矢は扉と床の間に綺麗に入り込み、つっかえとなった。
完全に密室となった教室。
ハルが鞄からナイフを取り出す。
「警備があまりにも薄すぎてとても助かりました」
季世は呆れたように笑う。
「はぁ本当にこの学校には困っちゃうナー」
その瞬間ハルがナイフを縦横無尽に振りながら飛び出した。
「??適当だね」
季世はトントンとリズムを刻み後ろに下がっていく。
ハルは不規則にナイフを振り進み続ける。
しかし季世がその腕を掴んだ。
「全然よくなーい」
「手は2つありますから」
握られた左手から画鋲の針がはみ出していた。
左手を季世に叩きつける。
「うっと危ない」
季世はそれを片手で受け止めるが、またハルがナイフを繰り出す。
今度は正確に季世を狙っていた。
「本気だね」
季世は机と机の間を華麗に進んでいく。
「ちょこちょこ鬱陶しいですね」
ハルは机の上に飛び乗り上から季世を狙う。
しかし奥の机に移ろうとしたその時、机がずらされた。
ハルはバランスを崩し、頭から床に落下する。
*****
気付くとハルは床で寝ていた。
「あ、起きた……どお?もお時間……無いけど」
随分時が進んだようだ。下校時刻まで残り2分程になっていた。
しかし、季世の様子がおかしい。顔は青白く目は虚ろで、赤黒い教室の中で一際目立っていた。
それに気付いたハルは何故か微笑む。
「……じゃ、タネ明かしを」
ゆっくり立ち上がり、鞄の中からある物を取り出す。
「なぁにそれ?精神安定剤ぃ?」
ハルが取り出したものは、昼休みに潰していた薬だった。
「はい。3箱用意して来ました。良かったらあげますよ……まあ、一日で全部空っぽになりましたけどね。
───お味はどうでしたか?」
校内に鳴り響くチャイム音。
下校時刻を伝えるのどかな音楽が流れ出した。
「あ」
「……今日は俺の勝ちなね」
そう言い扉に手を掛けた季世は、突然倒れた。
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