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62.長文コンクール
 ┗743

743 :迅
2021/08/08(日) 20:23:54

─8月8日・津上家─

「『今日暇だし、どこか行かねー?』っと」

 友人にLINEメッセージを送り、ベッドに横たわった津上彩人は自室の天井を見上げる。
 【 夏 休 み 】
 それは、高校生活の一大イベントと言っても過言ではない期間であり、友人との仲を深め、また新たな友人や知人を作る絶好の場である。

「(ダメ元で頼んでみたけど、どうなるかな……)」

 すると、間を開けずに通知音が入り、すかさず彩人はLINEを起動。メッセージ画面を開く。
 そこには、親指を立ててサムズアップするデフォルメされたシャチのスタンプが、新着の文字と共に画面に表示されていた。

「よぉぉおッし!」

 良い意味で予想外の展開に、彩人は思わずガッツポーズを取る。

『じゃあ、12時に駅前の噴水集合な!』
『OK、先に行って待ってるね』
「ッしゃあ、行くか!」

 彩人はショルダーバッグを肩に提げ、デニムパンツと半袖シャツの動き易い格好に着替えると、階段を降りてリビングに向かう。

「行ってきまーす!」
「はーい、気をつけてねー!」
「彩人にぃ遊び行くのー!?」
「夏樹と悠も連れてけー!」
「お前らはこの前行ったばっかだろうが!」

 玄関で靴を履き、家を飛び出す。
 高校初の最高でスリリングで刺激的な夏が、今始まろうとしていた───



─同時刻・戦隊学園学生寮─

「夏休みかぁ……」

 小豆沢七海は、小さな声で呟くように言った。
 高校生の夏。
 それは人生で三回しか味わう事ができない、特別な季節。友達と一緒に夏祭りに行ったりする事に、七海は小さな憧れを抱いていた。

「だったら、みんなで行こう?せっかくの夏休みだし、一緒に楽しもうよ」

 それを聞いていたのか、彼女の親友である伊良部楓が言う。
 それを聞いてまで実行に移さないほど、七海はものぐさではなかった。

「よし、じゃあ海でも行こうか」

 即座に決断した七海は、『オチコボレンジャー』と銘打たれたグループLINEにメッセージを送る。
 もちろん返答は全員OKだった。

「となると?」
「行くっきゃないよね!」

 二人は外出の欄に自身の名札を移動させ、玄関で靴を履き替える。

「私達の最高の夏休みの幕開けだー!」

 ややハイテンションな口調で、七海は某海賊漫画の第一巻を彷彿とさせるポーズを取る。
 これから、高校初の刺激的な最高の夏が始まる───筈だった。

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