日記一覧
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204.今は昔、
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山_姥_切_国_広
07/07(火) 13:06
>昔語りは閑話休題。
>今は今、の話。
#――今日は七夕だね。
そんな話を主がしていた。近年――といっても人間には悠久の時間に思えるかもしれないが、箱の中で生ける屍も同然の日々を過ごしていた俺は現代の感覚に疎い。
自分が名実共に刀として生きていた頃の概念が抜けきっていない。
>七夕はまだ一ヶ月ほど先だろう。
素直な疑問を口にしたら、2205年に於いて七夕とはこの日なのだと説明を受けた。…そうだったのか。知らなかった。
>牽牛と織女も大変だな。人間の都合で決められる暦によって、逢瀬の日が左右されるのか。
感想を述べたら主は唖然とした顔をして、他の刀達は各々腹を抱えて震えていたり、無粋な事を言うなと溜息を吐いたりしていた。…俺は何か可笑しな事を言っただろうか。分からない。
#まあまあ、取り敢えず貴方もお願い事を書こうよ。皆で竹に吊るすの、きっと楽しいよ!
乱_藤_四_郎が渡してくれた短冊を片手に、暫く考える。
俺の事は俺が決めたい。俺が自分の力で掴み取りたい。
他人の目や評価とは関係無く、俺は俺で在りたい。
人の身を得た今、それは必ずしも容易くはないが、不可能でもないと思っている。
願いといえば、これは願いなんだろう。しかし星頼みにするようなものではなく、自ら叶えるべき事のように思う。自分で乗り越えなければ、きっと意味は無い。
>“二星が、そして俺の周りに居る人や刀達が、幸せな夜を過ごせるように”
背が低くて届かないという短刀達の短冊を吊るす手伝いをした後、一番見え難い場所を選んでそっと飾った。
他人の恋愛や幸不幸に口を差し挟む趣味は無いが、この位なら祈っても邪魔にはならないだろ。
色取り取りの短冊を纏った竹は天高く届きそうな程に凛と聳えて、微風に葉をさらりと揺らしさざめき立つ。皆の願いが風に乗って、天を流れる星の河まで無事辿り着けば良い。
…取り敢えず俺は、2205年の常識とやらを学ばないといけないな。
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