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209.宵 の 境 の 神 楽 歌 。
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46 :羅ひ伽ろ利み倶つ大
08/26(水) 17:04

哀願
壊してくれ、と。本来ならば縋るよう強請る筈の言葉を他人事のように呟いたそいつの姿に如何する事も出来なかった。壊すのが好きだろう、と…老いた獣の血肉を悪戯に啄む畜生なのだから好機だろうと煽る言葉を並べ立てては穏やかに張り付いた笑顔で待ち侘びている。──…まるで今の俺に壊すことなど出来ないだろうと分かり切ったような視線が煩わしい。そう感じた瞬間朝餉は何かと推測するような気乗りで何かが事切れたのを理解したことと同時に、叫んだ。俺の意思とは反するよう吼えて叫び狂いそいつの臓物を引き摺り出し引き千切り、皮膚を裂いて皮を捲り脈打つ繊維に齧り付き啜り上げ眼球を抉り視神経を噛み千切り手の中で転がる目玉をじゅぶりと握り潰して溢れる液体を飲み込んだ。…それでも、痛みを与えるだけで壊せはしなかったが。

それがお前の本性で本質だとそいつは語る、騙りごとを語りごとに難無く変えて損壊した身体を矢張り他人事のように見詰めながら。…それでも俺が感じていたあの虚無感は嘘じゃない、事実手を下しても俺の中に残るのは強烈な疲弊と眠気だけで其処に満足感は雀の涙程もなかった。それでもそいつは満足気に笑って次は壊してくれよと言い残し手入れ部屋の奥に消えていく。

何のことは無い、俺が先に壊れてしまっただけだ。


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