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262.備忘録
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134 :へ-し-切-長-谷-部
02/29(月) 02:58


人の身も心も兎角ままならない。
寝なくてはいけないと分かっているのだが。
分かって、いるんだがなあ。

答えが分からないと、不安になる。
己の行動の正否を、出来る限り正確に与えて貰いたい、と思う。
一足す一を三と言ったら、それは二だよと教えて欲しい。
三になる事も有るかも知れない、などと、笑って有耶無耶にしないで欲しい。
一では無く壱と書いた方が望ましいなら、そのように指摘して欲しい。
一でも間違いでは無いからと、そのまま受け入れないで欲しい。

俺は何時だって、正解を探している。
教わったらその通り、従順に振る舞ってみせるのに。
最も求められる形で尽くして、一番使い勝手の良い刀になってみせるのに。
人は大概、そういった事を決して口に出してはくれない。

だから俺は、様子を覗う。
茶を飲む口元を、表情を、呼気を観察して、温度や味の善し悪しをはかる。
どの菓子の減りが早かった、どの食事の時に表情を和らげていらした、どうお答えした時に、喜んで下さった。
五感を研ぎ澄ませて、一瞬も見逃さぬように、必死に拾い集めて、自分の行動の指針にしていく。

けれど。
何をしても、温和ににこにこと笑われているばかりだと、どうして良いのか分からない。
一番になりたいのに、どうしたらなれるのかが分からない。
同じ場所でただぐるぐると回っている駄犬にでもなった気持ちだ。
どう工夫を凝らしても、返ってくるものが変わらない。
そもそも、俺では駄目なのかも知れない。もっと、根本的な所で。

「はあ、まあ、努力は結構ですけどね。ありのままの君を好いてくれる人をこそ、大事にするべきなんじゃないですか」
――ありのまま、など。
「じゃあ何ですか、君は僕と居る時でも僕好みに気を払っていると? 他の刀……例えば、日-本-号相手でも?」
――非常に不本意だが、最低限は。
「難儀な事ですねえ……僕なんか微塵も気を払っていないのに」

それはお前が愛され続けた刀だからだろう、とは、流石に言えなかったが。
ありのまま、と言われても、ありのままの自分を、とうに見失ってしまったよ、俺は。

>くるしいこいをした。


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