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288.それは仕様です
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22 :へ*し/切/長/谷*部
08/07(金) 01:33

記念日、と言う概念がある。
俺の主はそういうのに頓着を持たないせいか、近くで過ごす俺も数字…いや、帳簿や資材に関連する事はそうでもないのだが…そうだな、はっきり言えば日付を覚えられない性質だ。
主の生きる世界では、国から決められた○○の日、などもあるらしいが、そんなもの気に止めていられる気は全くしなかったし、誕生日、なんてものも俺には良くわからなかった。試しに主に設定して貰ったが、縁がないせいかやはりすぐに忘れた。(因みに主もすぐにお忘れになったようで、俺の擬似誕生日は速攻空虚に消えた訳だが。)
どんな名称がついたって、何も変哲のない、ただ過ぎるだけの1日だとどこかで思っているからかもしれない。


記念日だった。
上記のようなそんな俺だが、何故か光/忠と出会った日の事はやたらとよく覚えている。
今まではすぐ忘れていたような日付でさえも、頭の隅で鮮明に覚えていた。
だが、覚えていても俺には記念日と言う言葉の中身が存在しない。覚えていて、そこから先の事はよくわからない。
祝うのだ、と聞いた事もあるが、まず祝うと言う所から本来が刀の俺からしたら無縁のようなものだ。

「長谷部くん、日を跨いで一緒に過ごしてくれないかな」

帰還し、直ぐに告げられた言葉にこいつも覚えているのだとわかった。
特に断る理由も無しに了承を伝えれば、その時点で程良い時間にはなっていた。
俺達の会話は、普段から割りと雑談だが、その他愛ない会話が俺は存外好んでいてもっと話したいと願うばかりにそんなに軽くない口が饒舌に動く。
記念日、と題してはいるが、今日もそんな風に適度に話しては床に就くのだろう、そう思っていた。
そしたらやつがふと、いつにも増して真剣な面持ちで呼びかけてくるもんだから驚いた。
こいつが改まってこんな表情をする事は、余りない。余りないどころか今までに2回もあったか?と言った具合だ。
知らずの内に俺も緊張で強ばり、背筋が伸びた。何を言われるのだろう、と思った。
「長谷部くん。君と一緒に、生きていたい」
そう言われて、差し出された光/忠の手には小さく丸みを帯びた箱のようなものが一つ。
俺からすれば余り見覚えのないものだ。一瞬色々な物事が繋がらず、目を瞬かせて箱と光/忠を交互に見た俺の顔はきっとぽかんとしていて間抜けだったに違いない。
「約束通り、僕から君に」
約束、と言うのは以前のお嫁さんになってください寝落ち事件だろう。
光/忠は一瞬照れ臭そうな顔を見せたかと思うとすぐに真面目な顔をして箱を開いて見せればその手に銀の輪を摘む。
俺は理解が追い付かなくて「本当に準備するとは思わなかった」と小さく呟いていた。

こんな物はなくたって、口約束でも充分だし、俺が気紛れで指輪でも準備してきたら良かったか?なんて聞いたから、あいつはそれにただ乗っかって返事をしただけであって、本当に欲しいとも、本当に光/忠が持ってくるとも、何も思っていなかった。本当だ。

格好悪くも突然の出来事に思考回路が振り回されて気の利いた言葉の一つも言えず、ただ目の前の出来事にひたすら間の抜けた面を晒しながら誘われるように左手をあいつに差し出した。
手袋を外したその薬指に、光/忠が静かに銀の装飾を施し柔らかな口付けを落とすのを、俺はぼんやりと見ていた。


こんな物、なくたって充分なのに。

何も、本気で欲しいなどとは思っていなかったのに。

ああ、でも、でも…


突然に歪んだ視界と目元の熱さが、まさしく俺の本音だった。

お互いの薬指が、銀色に縁どられる。これで心身共にあいつに縛られてしまった訳か。それは向こうにも言える事だが。
どこかふわふわと、現実なのか夢なのか、心地の良い何かに浸かっている気分になりながら俺は光/忠に視線を向けた。

「なあ、光/忠……あ」
「ぐう…」



\安定の寝落ち!!!/



#翌日
>「大事な時に限って僕はもう…!」
>「いつもの事だろう、それより俺と夫婦になるというなら布団に篭るなどという怠慢は許さんぞ」



この日記は光/忠の格好つかない所を徹底的に晒してくスタイルを取ろうと思う。





#!!!!!!
#自分で気付く前に何処かの鶴さんの書込で「まさか…」ってなるなんて思いもしなかったよ!
>それなら僕は笑顔で自爆していくスタイルで。

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