彼奴と出会った頃の夢を見た。
出会ったのは春の日の事だった。初めて交わした言葉は茶でもしよう、だった気がする。
茶に薬でも盛れば良かったなんて物騒な軽口を叩いてはいたけれどその頃はまだ彼奴に興味なんて無くて。そもそも恋仲なんて作るつもりも無かった。
今までもそうしてきたように誰にも見向く事はせず独り身で居ようと思っていたのに。
気がついたら彼奴から目が離せなくなって愛しくなっていった。
その気持ちに戸惑ったのは自分自身。恋患いなんて年単位で久しいしどうしたら良いのかなんて分からなかった。自身の気持ちに見てみぬふりをしようかとも思ったくらいだ。
そんなあの頃の夢を見て目を開けると今隣には恋い焦がれた彼奴の寝顔。
今こうして隣に居られる事に、愛し愛される事に幸せを感じる。愛しい、心から。あの頃よりも今の方が愛しい。
さて、思い出にたっぷり浸った所でそろそろ出陣だ。今日も彼奴の可愛い寝顔に頬を緩ませながら一日を乗り切ろう。