日記一覧
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480.明くる日
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230 :
大_倶_利_伽_羅
04/21(水) 05:28
…腹が減って眠れない。
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色々な事が短期間の中にあり過ぎたせいで、手入れに時間が掛かってしまうことになった。自身の不甲斐なさと自尊心とを引き換えに、光忠との時間を得られることになったのは、不幸中の幸いと呼べるのか、どうか。空白が余りに広いせいで、落とす墨に躊躇いが出る。あれは本当に、良い奴だ。どうしようもなく落ちぶれた刀を、ただ待っていてくれた。そうして生じる痛みは計り知れないものだったはずなのに、目まぐるしく変わる世界の中で、彼奴だけはただ一振、かわりなく、そこにいてくれていた。
◇
刃こぼれが酷い刀なぞ一体誰が振るおうか。
俺はただひたすら、己の存在意義に疑問を投げかけていた。隣に、或いは傍らに、時には後ろに前に。彼奴が居なかったとしたら、真っ先に自身の腹をかっ捌いたのちに、やいばを折っていただろう。疑問はいまでも己に根付いたまま、足元の先ばかりを見つめている。
夜明けが遠い俺は、朝ばかりを願っている。夜が恋しいくせに、日が昇るのを待っている。俺はもう、歩き出さなくてはいけない。淀むだけの停滞に沈んでばかりいて、変わらないものを望みながら、かわらない現実に辟易している。
おはようも、ただいまも、あんたと共に迎えたい。
幾百と夜を越えた今も、それだけは、変わらずにここにある。
◇
停滞することと、変わらないことは違う。そのことに、気付くのが遅かった。今も、昔も。
◇
おはよう、光忠。
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