日記一覧
480.明くる日
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99 :大_倶_利_伽_羅、燭_台_切_光_忠
02/17(水) 01:20




ひとの血は、四ヶ月で全て入れ替わるらしいと光忠の口から語られたのは、出逢って四ヶ月になる少し前のことだ。耳にした事の無かった話を何と無しに受け止めて、『僕の知る君の記憶は、重ねた分だけ色濃くなるんだろうね、』と続けた声音を聴きつつ、傍の隻眼に目を遣った。何と言うことはなく、本当に、茫洋と思っただけの事を口にしたんだろう、その視線の先は少し遠かった。
だから言ってやった。なんとなく口にする曖昧さに、輪郭を付けてやろうと。「俺は、薄れることは、多分ない」と。はっきりとした返答で。
あれから、数ヶ月が経つ今。
関係性はがらりと変わり、見える景色も、目に映る姿へ募るおもいも、まるで変わってしまって。それでもあの時と同じように問われるなら、また真っ直ぐに返してやれるだろう。忘れるなんて出来やしない。
そんな事を語った日から、丸四ヶ月以上経つ。
ひとの血が本当に四ヶ月で作り替えられるのなら、友刀として傍に在ったあの日から、すでに入れ替わっているであろうそれに、柔く笑んで口にする。

『今、僕の血は、全部、恋人としての君しか知らないんだと思うと、なんだか擽ったいね』

何だか、俺が擽ったくて、むずむずとして堪らなかった。俺の血も、恋人としてのあんたしか知らないのだろうと思うと、……矢張り少し擽ったい。記憶には、たくさんのことが重なって色濃く残っていると言うのに。
手を、繋ぐようになってから四ヶ月。この血には、何もかも引っ括めて、愛おしさばかりが滲んでいる。変わらず傍に居てくれて、居させてくれてありがとう。
今日もあんたを、愛している。




そんな話をしたのは、確かに四ヶ月、には、少し満たない頃。あの頃はまだ、色んなものが曖昧だった。はっきりと薄れることはないと言った彼にも、律儀だなあとぼんやり思った記憶がある。続く言葉を聞きながら、ほんの少し言葉を交わしただけの僕に、いつか途切れるであろうこの関係をそんな風に記憶に残しておかなくったっていいのになあ、と思ったことを覚えている。忘れてくれたっていいのに。そう思う反面、離れて会うことがなくなっても、きっとこの律儀で物好きな彼を覚えているんだろうなと思っていた。ぼんやりと。

あれから数ヶ月。
手入れ部屋を借りに来ては眠れないとくだらない話をして夜を過ごした友刀と、気がついたら隣で眠るようになって、出陣を見送るようになって、出迎えるようになって、ただいまを言うようになって、お帰りを言うようになった。
四ヶ月前に、はっきりと。主語の曖昧でない好きを伝え合うようになって、愛していると伝え合うようになって、わからなかったことがわかるようになって、掌を握って眠るようになって。誰より一番そばに、今も、彼はいてくれている。
彼の記憶にある、友刀としての僕と、今の僕はまるで別刃のように違うだろう。それくらいにはこの四ヶ月で甘くなった自覚がある。
ねえ、こんなに甘ったるいと思わなかった?なんて、聞いたらお互い様だと笑われるだろうか。それくらいに、彼も僕も様変わりした。本当のところ、恋人という関係性が、今でもなんだか擽ったい。

四ヶ月。一番そばにいてくれて、いさせてくれて、ありがとう。
『また明日』に返す言葉は、目が覚めて真っ先に、僕から君に伝えさせて欲しい。
おはよう、大倶利伽羅。今日も君を愛してる。



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