日記一覧
┗
494.犬に関する覚書。
┗4
4 :
へ_し_切_長_谷_部
09/06(日) 14:22
あれとの会話を思い出せば思い出すほど、何故好かれているのか分からなくなる。
耳障りの良い声が率直な好意を伝えても、無感動に受け止めるだけで返しはしない。褒め言葉にも喜ぶ事はないし、柔らかな笑みを向けられても微笑み返す事はない。
それでいてあれが嫌がる事を強いたり、駄目だと言う事をしたりする。まあ、本気で拒絶しているわけではないのはその瞳が雄弁に語っているから、些か強引にでも強いるわけだが。
だというのに、あれは俺にとろりと甘い感情の欠片を差し出す。それもこれも、全部纏めて俺なんだから、と笑う。意地悪でも好きだ、と柔らかい声が囁く。物好き極まりない。
素っ気ない態度にも、意地の悪い手にも、嫌だと噛み付く代わりに腹を見せて喉を差し出す犬の姿は、やはり美しくて可愛らしい。
どろどろと腹の底で渦巻く黒いものは蛇の姿となり、その白い喉笛に牙を立てる事で理由の分からん満足感を得る。ああ、主。俺は、どこかおかしくなってしまったのでしょうか。刀としてお役に立てなくなってしまったら、…それがただひたすらに、おそろしい。
[
削除][
編集]
[
戻る][
設定][
Admin]