日記一覧
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494.犬に関する覚書。
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へ_し_切_長_谷_部
09/07(月) 18:32
雨が降った。さして気にもしていなかったが、次第に身動きが困難になるほど頭が痛くなり、仕方なく主に報告した。恐らく偏頭痛だろうと愁眉を寄せた主は、手入れでは治らぬ類のものだから、出陣を控え薬を飲んで暫く寝ておけと仰った。
痛む頭を枕に乗せれば、締め付けるような痛みが酷くなる。こんな事で動けなくなる人の器が憎らしい。主、俺はまだ働けます。そう言えなかったのは、敵との距離すら測れなかった事実から目を背ける事が出来なかったから。主がために振るう刀が敵を斬り伏せられんというなら、足手纏いでしかない。
目覚めてからも、鈍痛が続く。和らいだとはいうものの、完全な回復には至らなかったらしい。
外傷には慣れている。戦場に出る以上、当然だろう。
しかし、内側からの痛みは駄目だ。どう対処していいのか分からん。つらい、苦しいと口には出来ても、結局外から癒す事は不可能だ。飲み込む粉薬の苦味は、内を癒すのではなくその手助けにしかならんと聞く。
風邪を引いたら看病して、とあれは言うが、長く痛みや苦しみを抱えるより、手入れですぐに治した方がいい。あれに痛みを与えるのは、俺だけでいい。
人の身は厄介だ。面倒だ。あの美しい身体が目に見えん病に蝕まれる事など、想像したくもない。
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主が見舞いだと団子を下さった。一日置いても大丈夫だとひっそり笑った主の視線は、俺ではない遠くを向いている。その意味を理解出来たから、有難く明日頂きますと受け取った。
滑らかな餡子が慎ましい白の餅を包み、甘い香りを振り撒く。串に刺さったそれを食べるのは、明日、犬が俺の腕に抱かれに来てからにしよう。
まだ鈍痛が居座っている。流石に半日も付き合っていると、慣れてきた。
明日こそは、主に勝利を捧げます。
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あれに何やら責められた事を思い出した。曰く、誑しだと。
そうして更に思い出すのは、初めてあれから受け取った文。逆でも構わん、と言っていたが、特に異存がなかったためへ_し_切_長_谷_部としてあれの前に立った。あの時もし、俺があれの姿で顕現していたら。ーー今以上に責められていた気が、する。
まあ、所詮もしもの話であり、逆の姿であった時、あれが俺の隣を強請るかは怪しいとしか言いようがない。噛み付かれるのを好むようだし、満たされんと離れる可能性も高いだろう。
今のこの形が最良なのかも……疑問では、あるが。あれが嬉しそうだし、まあ構わんか。
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