日記一覧
494.犬に関する覚書。
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9 :へ_し_切_長_谷_部
09/11(金) 21:21


柔らかい好意に対して尖った切っ先を向ける俺は、恋情を注ぐに相応しい相手ではないんだろう。あれは人のように実に多彩な感情を俺の器に注いでくるが、この人の形をした器は完璧に模しているようで、実際には所々に罅が入っている。注がれた感情を全て受け止めるのは難しいそれは、あちらこちらからころころと感情の欠片を零す。その結果、好意に刃を向けるという行動を生み出しているのかもしれん。

次の出陣までの待機時間、俺の顔を見た薬_研が、あからさまに眉を寄せた。素知らぬ顔をして書物に目を通す俺の前に胡座を掻き、わざわざ書物に指を掛けて顔の前から退けるという行動に頬が引き攣る。赤疲労目前じゃねぇか。文句を言うために開いた口は、言葉を亡くして再び引き結ばれる。
言われずとも、俺の身体なんだから俺がよく知っている。気怠い疲れは指先を微かに重くさせるも、出陣に影響があるものではない。…返事をしない俺に何を思ったか、溜息を吐く顔は幼いながらも涼しげで、あれとは違った美しさがある。まあ、俺は稚児に興味はない。噛み付くならばあれの白い喉がいい。好い仲の旦那がいるんだろう、膝にでも甘えてみたらどうだい。…………いつの間に、知ったんだ。



_____

どうやら、疲労からくる発熱、らしい。お前は電池が切れたように急に体調を崩す、とは主のお言葉だ。幸いにも明日は非番、静かにしていればすぐに回復するだろう。

…ああ、そうだ。鍵などこの刀の前では無力と知れ。今更どうしようとお前の自由だ、好きにすればいい。お前が秘めたいのならば、目を通す事もしないと誓う。

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