三千世界の鴉を殺めずとも、愛おしい恋仲は傍に居る。無意味な殺生は性に合わん。 それに、三千世界の鴉を殺したところで此の我儘が叶うことは無い。
嗚呼、俺は本当に面倒な刀だ。 捨てられたくないと嘆きながら、捨てられる事に身構えていた。剰え、それを、愛おしい恋仲へ、直接手を下す時は一思いに、そう告げてしまった。 はは、っ…己が無様で仕方ない。ただ、寂しくて、お前が何時か俺に飽きてしまうのではないかと言う杞憂に恐れていただけなんだ。 ただ、求められたかっただけなんだ。
此処最近は空回ってばかりだな。以前の様に我慢するには、如何すれば良いんだったか。 少しでもお前の傍に寄り添う事を許される時が長引くように、少しでも身を蝕む刀身の錆の進行を食い止めるように、それが唯一俺に与えられた道だ。 愛おしい薬/研/通、如何かこの先も俺だけを見ていてくれ。
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