折れてはいない。
こうして避難しに来るのも久しいな。良い事なんだろうが。…今は忙しさと諸々の複雑化で、己を見失いそうになっている。あれへの愛に縋ろうにも、あれにだって事情はあるだろう。結局、あれの目が届かない此処で震える臆病な一振りが俺だ。
これを知ったらあれは幻滅するだろうか。いや、何故言ってくれなかったのかと心配するんだろう。そういう奴だ。そういう奴だからこそ、打ち明けられはしない。あれが無理を押してまで俺に手を掛けるのは、俺自身の矜持が許さない。
……つくづく面倒な刀だ、俺は。
少しだけ、ほんの少しだけ、あれに対して不義理を働いている……んだろう。それも相俟って足が重くなる。何の陰りもない「愛してる」が言える男_士でありたい。
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主に賜った金平糖の期限が切れ掛けていた。大切に、大切に食べていたのに。…幾ら大切にしても、終わりは来るのか。せめて食べ終えた缶は綺麗に洗って保管しておこう。金平糖が無くなっても、これを賜った事実は消えない。