視界が歪んで珠の様な冷や汗が額に浮かんだ。悟らせてはいけない、背中を向けてはいけない。戦う為の道具たるもの、逃げるわけにはいかない。誰かを傷付ける為の道具でしかない、そう思っていた。所詮そこに宿って微かに形作られた魂の様なもので。紛い物、擬きでしかない。霧散すれば消え去り、朧気だった形すら失われる。誰かを守る為に存在するなどと、あの頃の俺にはとてもじゃないが思えなかった。人で在りたい、などと過ぎた願いを唇に乗せることは許されない。 言葉は紡がれず、喉の奥で潰えた。