ああ、それは今まで歩いてきた轍なんだと、そう思った。決して緩やかではなかった。泥濘に足を取られて、躓いては転んでの繰り返しで。何か尊いものを失っては立ち止まって、過去を偲び惜しんで、時には慟哭しながら痛む身体を引き摺り、漸く此処まで来たんだと。傷が付けば付くほど磨かれ輝きを増すそれは、いつしか俺の中で在ることが当たり前になっていたらしい。塞ぎ込んで地面を見詰めていた瞳が、もう一度天を仰ぐこの瞬間をしかと見届けたい。過去への決別と、未来への一歩を。
愛してくれるか、だと?
愚問だな、骨の髄まで愛してやろうじゃないか。骨が軋んでその唇が痛みを訴えようとも、離しはしない。