ただひたすら馬鹿になれたら、どれ程良かっただろうか。無駄な自尊心だけは一丁前でも、選ばれなければ何の意味もないというのに。眉間に皺を寄せながら呑む酒は、俺に眠りという逃げ道すら与えてくれない。浴びる様に飲んでも、悲しいかな浮遊感すらない。もういっそ意識の底に引かれる感覚に身を投げてしまいたかった。こんな時にまで、俺は寸分の狂いもなく現実主義者だ。
どうして俺じゃないのか、そんなことを考えてみても詮無いこと。彼の人は俺を選ばなかった、それだけが紛うことなき事実。所詮名も無き草が幾ら太陽を見詰めようとも、黄金色に輝く大輪の向日葵にはなれない…そういうことだ。