今にも弾けそうな程に膨らみきった瓜の青々しさ、薄桃に色付いた芍薬と水辺に咲く白百合の仄かな甘み。噎せ返りそうなくらいの湿度を帯び、蠱惑的で身体に纏わり付いてくる様な濃い密度。 きっとこの長雨が続く季節の香りを形容するならこうだ。太陽は雲を纏ったまま稀に顔を出しては、暗く淀んだ重苦しい地上へ気紛れに梯子を下ろす。きっとあれを登ったところで、何処へ辿り着けるわけでもない。 皆が光を求めるあまり我先にと駆け上がれば重さで梯子が落ち、また空は沈黙を決め込むのだろう。