未だ体温を孕んでいない、冷たい布団を爪先で蹴る。上がりきった温度が染み一つ無く、純な白のそれに奪われていく様が心地好い。ふと視線を移せば、月が青白い光を障子越しに射し込ませては、朧気に辺りを照らして影絵を映し出していた。水鏡程に明瞭ではないそれは輪郭を暈し、灯火の様に揺れては形を崩して、奇々怪々な姿へと変貌していく。雲に隠れて光が届かなくなると、先程まで飛んで跳ねてとしていたそれは音も無く消えた。きっと風に吹かれて、惜しみながらも何処かへ去ってしまったのだろう。零れた涙の様に、大粒の雨が土を叩いた。