褐色の背中を自由に泳ぐ絢爛な龍を疎ましく感じたことがある。形在るものはいつかは壊れる。僕がもし君の知らない遠い地で壊れてしまっても、その欠片は君の元へは届かない。それなのにあの龍は君が壊れるまで共に添い遂げ、その身体に刻まれているのだから。羨望という綺麗で純粋な感情だけじゃない、心の奥に渦巻く陳腐で薄汚れた嫉妬も勿論ある。
これみよがしに視線を絡めてくる彼の目が三日月を描いた様な気がした。この場所は自分だけの物だとでも言いたげに。瞳を描き込めば空に舞い上がる筈のそれは、既に僕を見詰める瞳を持っていたんだ。もしも濡羽色の瞳がそこになかったら、僕が描いてそこから追い出してやったものを。