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109 :燭_台_切_光_忠
05/30(月) 07:40

たとえば、長谷部くんが思うしあわせの形が幾つかあるとして。
僕にしか与えられない、僕だからこそ彼に与えられる、僕の近くにいるからこそ感じて貰えるしあわせもあるんだろうか。


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四ヶ月ほど前に、僕は上のようなことを書き綴っていたらしい。
あ、久しぶりだね。ハーイ!ハセベー&ミツーの、ストローはすぐ噛んじゃうほう!光_忠です!


長谷部くんが、僕を「宝物」だと言っていた。
なぜ彼にとって、僕が「宝物」になり得るのか、正直まったく分からない。付き合っていた時も、恐らく似たような台詞を言われたことはあるんだろうけど、僕は、彼の「宝物」になり得る要素は、何ひとつとして持ち合わせていない。べつに彼相手に限った話ではなく、未来永劫、僕は誰の宝物にもなれないだろう。

こんな話をすると、心根のやさしすぎる子には同情をされ、挙句の果てに「そんなことないよお、あなたには素敵な部分がたくさんあるよお」なんて一生懸命否定され、僕は「そんなこと言ってくれなくていいのにな」と見目の良さを最大限に活かした微笑みを浮かべるしかなくなってしまう。具体的にどうぞ?なんて嫌味なことは言いたくないし、聞いたところで僕は信じられないだろうし、……ああ、こんなことで思い悩むこと自体が格好悪い。


誰かの宝物になれるのかもしれない、と、僕は、まだ信じ続けていたいのかな。自分でも、よく分からない。少なくとも「信じたい」と、僕は不相応に思っていたのかもしれなかった。

たとえば、誰かが思うしあわせの形が幾つかあるとして。
僕にしか与えられない、僕だからこそ与えられる、僕の近くにいるからこそ感じて貰えるしあわせなんてものは、果たしてあるんだろうか。そんなものは、世界中のどこを探したってないはずだ。ある、と信じたい気持ちだって、もちろんあるけど。

物は物でも、「宝物」だと思う子に「宝物」だと思われたいだけの刃生だったなあ。まあ、けれど、どこまでいっても物は物だ。それ以上にはなれやしない。けどさ、心なんて厄介なものを、どうして主は取りつけてくれたんだろう。外してくれよ。邪魔で仕方ない。
ねえ、長谷部くん。心臓解体キットを作って?粘土でいいからさ。君、ぺたぺたこねこねするのは得意だろう。まずは、僕の後頭部を思いっきり蹴り飛ばして、気絶させてから、心なんて名前の邪魔な器官を取り外してね。そのまま永遠に目覚めなかったら、馬の世話はお願いしていい?


長谷部くん。僕はさ、思い出の善し悪しは、やっぱり結果論だと思うよ。どんなに素敵な思い出でも、それ自体に価値をつけるかどうかは、いまの自分次第なんだ。いままで当たり前のように繰り返してきた台詞だけど、…結果論だなんて、なんだか悲しいね。
あ、でもね。君が僕といることで、汚れなくてよかったとは、思ってるよ。君と恋人でいる間は「汚れてほしい」と、ずっとずっと願っていたけど、……汚れなくてよかった。だって、もし君が、あのとき僕のせいで汚れてしまっていたら。僕らは「嫌われるかもしれない」と思わずに済む、いまの関係には辿りつけなかった。辿りつけて、うれしいよ。
大体、汚れていた、だなんて、一体どの口が言うんだろう。……あの頃の君が、君の言うとおり、多少汚れていたとしても、その汚れを作ったのは僕じゃないか。君じゃない。健全に、歪みなく、正しく愛そうとしてくれていた君を、拒絶し続けたのは僕だ。あの頃、それじゃ足りない、と言葉で伝えることができていたら、なにかが変わったのかな。どうだろう。なにも変わらなかった気がする。

けど、決して僕を安易に否定したりせずに、くだらない話を聞いてくれる君との時間は、…いまの僕らの距離が遠いからこそ実現できているものなのかな。きっと、そのはずだ。
僕らは、もう二度と心の奥まで近づかない代わりに、安心感を手に入れたんだね。一口に「しあわせ」と言っても、その形は、幾つもある。

君はいま、しあわせ?
聞いておいてなんだけど、しあわせだ、と頷いて。僕との過去があったから、僕が与えられているものが今も何かしらあるから、しあわせなんだと、教えてくれないか。僕にも価値はあるんだと、背中越しの距離で繰り返してみて。お前は最高の友人だ、最高の元カレだ、と。僕と過ごした時間は、決して無駄なんかじゃなかった、って。

思い出の善し悪しは結果論なんかじゃない、と。僕がなにを叫んでも、永遠に否定し続けてよ。

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