日記一覧
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89.モトカレはせべ
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112 :
へ_し_切_長_谷_部
08/28(日) 15:25
「たまには日記をつけよう」
#「絶対書かないよ!君、絶対忘れるよ!」
~数週間後~
「日記をつけ忘れていた」
#「ほらね!!!わかってたもん!!!長谷部くん、絶対書かないって思ってたもん!!!ふええ」
と光_忠が泣いていた。
俺は主命には従うが、どうもこういうところが駄目なところらしい。光_忠が泣くと、俺はなんとか宥めようと頭をずっと撫でる。こういう時にだらだらと言い訳をしたりしてしまうと逆効果だ。俺は学習する刀だ。I am クレバー。
#(さすが長谷部くん、よく分かっている……)
光_忠は最近、熱心にお料理番組を見ている。テレビで。今晩のおかずから手の込んだお菓子まで、食い入るように画面を見つめては「おいしそう」「これなら作れるかな」「材料がないな…買ってこなきゃ」「うーん、これはイマイチ。みんな好きじゃないかも」などとぶつぶつひとりごとを言っている。
俺はそれを隣で見ていて、時折口を挟む。9割がた、「それは食べたい」と。
光_忠はいつも何かしらメモをするための帳面を持っていて、それはすぐに一冊使い終えてしまうようだが、多分そのレシピもいくつも書き込まれているんだろう。時々、
#「どうしよう、あのメモどこにやったかなあ…この帳面でもないな、これも違う…」
と部屋の中をうろうろして探しまわっているのを見かける。光_忠は大抵、料理なんかは器用にこなすし、大事なものはきちんと手入れが出来る場所に仕舞っておく几帳面さは持ち合わせているが、たまに粗雑なところもある。
俺は必要最低限のモノしか持たないし、光_忠のように何かメモ書きをする癖もないので、探しものをする光_忠を横で見ていたりする。
もちろん、俺が光_忠の持ち物の場所を把握しているわけもないので、助言もできない。ヤツも俺が何の役にも立たないことを知っているので、何も聞いてこない。
駄目夫と妻のような関係だな、と思うこともある。
むしろ下手なことをすると「いいから座っててよ!」と怒られかねない。
俺は自分本位な刀だという自覚がある。
光_忠のためにできることだとか、役割だとか、光_忠が俺のそばにいることで得られるメリットだとか、そんなことを完全に度外視して、いいからいてくれなどと、随分勝手を言ってきた気がする。
それを気にしない図太さも持ちあわせていて、繊細に物事を考える光_忠に、そんな俺がどう見えるのかは…まあ想像に難くないだろう。
それでも、メモが見つからないと一人で困り果てていた光_忠が、時折俺の私室にちょっと顔だけ覗かせて「長谷部くん、」と呼びかけてくる時、俺は自分でも驚くほど察しがよく、手招きすることができる。
ヤツは子供のようにぱっと顔を輝かせて、「あのね、」と続ける。
役立っているな、と思うのはせいぜい、そんな時くらいだろうか。
それが全てではないし、光_忠に他にそんな「あのね」の先ができたとしても、全く構わないとは思うが、益体もなく文句を垂れたり、悲しいと泣いたり、たまに、あのね、うれしかったんだよと話す光_忠の顔は、スキヤキに似ている。
そうだ。
今夜は、ピザが食いたい。
#今夜はすきやき風ピザだね!いいとこ取りだよ!
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