日記一覧
89.モトカレはせべ
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86 :へ_し_切_長_谷_部
08/27(木) 11:23

主から暇をもらっていた。
違う。誤解するな。解雇じゃない。世に言う夏休みだ。バカンスだ。リフレッシュ休暇だ。自己研鑚期間だ!別にもうお前なんかいらないと言われたわけじゃない…違う…違う……。

休暇だからと言って、最近オープンした新しい甘味処の団子を食べたり、手びねりの器を作ったり、裏山に出かけて風景を写生したり、庭の手入れを始めてみたり、乱の買い物に付き合って夏物バーゲンで特価品を購入する以外に特にやることもない無趣味な俺だ。その日もずっと読みたかった本を朝方の涼やかな空気を味わいながら葛切りをおともに読みふけっていて暇だったので、光_忠が主に付き添って海に行くというのでついていくことにした。
(海では桃色の髪色をした少女がやたらと話かけてきた。「バカンスとか羨ましい~!こっちはそれどころじゃないっぽい?潜水艦の子たちの疲労も真っ赤でやばいっぽい?バケツも資源も足りないっぽい?」と言っていたがよく意味がわからなかった。軍属は苦労するようだな。)

お前は夏休みなのに、主に付き合うばかりでどこにも行かないのか、と聞いたら、光_忠は笑って頷いた。

#「うん、…なんかね。どこにも行く気がしなくて」

主はこの海の近隣の軍の知り合いに用事があるとかで、俺達は待機している最中だった。
付き添いに来たのだから我々も同行すると申し出たんだが、お役所仕事だからと断られた。面目丸潰れだ。
凪いだ海はきらきらと輝いて、光_忠の濡羽色髪に光が反射していた。
その横顔は、何を考えているのだかいまいち読み取れない。
そういえば、ここ最近光_忠は非番の日でもずっと本_丸にいる。出かけたと思っても、せいぜいプリンを買ってきたとか、その程度だ。
波止場は照り返しでじりじりと暑い。嗅ぎ慣れない潮の匂いが生身の身体を軋ませるようだった。
俺達は手入れされなければ錆びて朽ちるだけだが、使われ過ぎてもいつか折れる。
光_忠は疲れているのかもしれなかった。
疲れているのから、買ってきたプリンを俺のそばで食べるのかもしれない。

#「僕、どうかしちゃったのかなあ」

求めている状態を安定と呼ぶのか、求めない状態を不安定と呼ぶのか、俺にはいまいちわからない。
変化が無いと不安になる人間もいる。

「釣りでもするか?」

竿など無いのに尋ねた。光_忠は首を横に振った。

#「しばらく、釣りはいいよ。長谷部くんが居て」

主が戻るまではあと暫しあるだろう。
どこか遠くで太鼓の音が聞こえている。


>TTT


・とある夏休み中の本_丸の光景

「光_忠…」
#「ん、何?長谷部くん」
「この日記、すごく面白いぞ」
#「え、長谷部くんが褒めるなんて珍しい…!どれどれ、どんな日記?」
「いや、元カレ日記だが…お前の記事はすごく面白いな」
#「突然照れるよ!!!!!!!!長谷部くん!!!!!!えへへ!!!!!!!」

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