日記一覧
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89.モトカレはせべ
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94 :
燭_台_切_光_忠
01/29(金) 04:45
#「あなたたち庶民は、ボ_ノ_ボ_ンを知っていますか」
庭で水やりをしていた僕らのところに来た宗_三くんが、開口一番そう尋ねてきた。
彼の手には、派手な銀紙に包まれたチョコレートが乗っている。どうやら『ボ_ノ_ボ_ン』とは、その菓子の名前のようだった。
「初めて見た」
「僕も。それで、このチョコレートがどうしたの?」
#「一粒たったの二十一円なのに、まるで老舗の職人が作ったような味がするんですよ、このチョコレートは。
# かく言う僕も大好きでして。耐え切れずに、つい先日、主に頼んで箱買いして貰いました」
「めちゃくちゃ気に入ってるね?!」
「貴族然としながら庶民のものを勧めてくる奴もなかなか滑稽、痛ッ」
宗_三くんは流れるような所作で長谷部くんをぶっ叩いた後、今しがた届いたばかりのheshizon.co.jpの箱から、やはり派手な小箱を取り出して、
#「これで六百円と少々です。あなた方にも、ひとつずつあげましょう。ほら、お食べなさい」
と、去り際、僕らに一粒ずつボ_ノ_ボ_ンなるものを分けてくれた。
「あいつは、俺たちが特別な存在だからこのチョコレートを寄越したのか……?」
「長谷部くん、たぶんそれはヴ_ェ_ル_タ_ー_ス_オ_リ_ジ_ナ_ル」
特別な存在にあげる飴は置いといて。
食べたことのない僕らのような一般庶民カッコワライに向けて説明すると、ウェハースでチョコクリームを包んだ後、更にチョコレートでコーティングを重ねたお菓子――それが、ボ_ノ_ボ_ンだ。
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で、まあ、件のチョコレートはたしかに美味しかった。
これがちょっとの小銭で買えるなんて……!と、僕も長谷部くんも甚く感動した。長谷部くんなんか、
「チョコレートを食って、久しぶりに美味いと思った」
とまで言っていたし。まあ、だから美味しいんだよ、ボ_ノ_ボ、……くっ、検索避けが地味に面倒だな……!
「これが小銭で買えるなら、長谷部くんが好きなハ_ー_ゲ_ン_ダ_ッ_ツよりも優秀だよねえ」
ハーゲ以下略をひとつ買うお金で、ボ_ノ_ボ_ンが十個は買える。同じような幸福なら、後者を十個買ったほうがお得だよね。と、何の気なしに僕は言った。
「いや、それはないな」
「あ、やっぱりハーゲ以下略のほうが美味しい?」
「そうじゃない。ハーゲ以下略には、ハーゲ以下略の幸せがある。それは、何物にも代えられない」
「じゃあ、このチョコレートには?」
「このチョコレートにも、このチョコレートのしあわせがある。ハーゲ以下略の代わりにはなれない」
たとえば、長谷部くんが思うしあわせの形が幾つかあるとして。
僕にしか与えられない、僕だからこそ彼に与えられる、僕の近くにいるからこそ感じて貰えるしあわせもあるんだろうか。
彼は、なんだかんだと合理的な男だ。自室から庭先に出るまでの歩数を毎回数え、常に最短距離の動線を探しているような男が、なんの利もなしに僕の近くにいてくれるとは考え難い。
ましてや、彼はパッパラパーではないらしいから、尚更だ。
僕は、君の小銭で買えるしあわせになれてるかい。
「そんなことも分からないのか」
と、きっと君は言うだろうけど。
分かってても、聞きたいことはあるじゃないか。
「そうだ、と言って」と強請れば、君はいつも通り渋々頷いてくれるから、僕の欲求はまたしても簡単に満たされる。
僕の根性がないせいで「ハーゲ以下略」ばかりが目立つページになってしまった。
流し読みするだけだと、まるで「ハゲにはハゲのしあわせがある」みたいな、薄毛で悩む人にとっては不快いい話~状態だよ。ま、いいか。
ちなみに、ボ_ノ_ボ_ンはひとつ約100キロカロリー。ご飯を茶碗に半分と大体同じ。
食べ過ぎにはご用心だよ!長谷部くん!
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