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4.【暗躍】ダークサイド【恐怖】
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890 :千堂&財団X
03/27(水) 21:19:35 PP40hybz0

 夜、喫茶店ポレポレから少し離れた居酒屋で、中年、壮年の2人の男と金髪ロン毛の少年が卓を囲んでいた。談笑混じりの賑やかな席で、3人の表情も明るく仕事終わりの宴会のようにも見える。少年は中年男のグラスに酒を注ぎながら口を開く

「まさか、そっちから呼んでくれるとは思って無かったよ千堂さん。仮にも今は正義の味方側でしょ? 良いのかい? 財団のような悪の組織に与して」

 千堂…喫茶店ポレポレの副店長を勤める男は少年の言葉を受けても悪びれる様子もなく平然と答える

「先立つ物が無ければ正義も悪も無いからね。そこは君達、財団Xが1番分かっているだろう、佐藤君」

 財団Xとは世界中の研究に出資して、その研究成果を兵器開発に応用し各地の紛争地帯に売る武器商人だ。千堂ともう一人、BADANの元科学者は財団Xに資金提供を持ちかけていた。その交渉に応じたのがこの佐藤と呼ばれた少年だった

「大ショッカーとの戦いが本格化してしまってね。我々の現状戦力だけでは厳しい。強化装備の開発にも金はかかる……財団Xも大ショッカーと戦闘は出来るだけ避けてるが、彼らはこの世界も支配するつもりだ、何れは君達と大ショッカーも衝突は避けられないだろうな」

 大ショッカーは全多元宇宙の支配を目的とした組織だ。様々な仮面ライダーの世界に存在する悪の組織を吸収しており。その戦力規模は計り知れなかった。地球全域で活動している財団と言えども保有戦力では大きな差があるだろう

 佐藤もそれは理解している。千堂達は財団Xが金を出したら代わりに自分が大ショッカーと戦うと言っているのだとも

「君達なら勝てる……って事でもないよね。元々大ショッカーの構成員だし何か弱みを握っているのかい? それとも他の店員やお客様に頼るとか?」

 件の喫茶店は仮面ライダーをはじめ幻想郷、時計塔の魔術師の組織、ゴッドイーター、ハンター、サイコデュエリスト等々様々な組織や存在と繫がりがある事は財団Xも把握している、彼らの戦闘力の高さや能力の多様さであれば大ショッカーの持つ戦力にも対抗しうると踏んでの佐藤の発言だが、千堂は苦笑を浮かべて首を振った

「確かに。彼ら彼女らの力を借りるなら勝てるかも知れないが。我々から協力を強制は出来ないさ。皆さん頼めば協力はしてくれるだろうが……」

 戦闘集団ではなく単なる喫茶店の店員、客の関係である。当たり前だがそれぞれ事情もあるわけだ。能力があるから、実力があるからと自身の身を削って戦えと言う事は出来ない

(なあなあで来たが……妹紅さん、うどんげさん方ともキチンと話さないとならんか)

 すっかり甘えていたと後悔し、苦い顔をする千堂は自分を不思議そうに眺めている佐藤に気が付いた

「つまり……最悪、君ら元大ショッカー組と仮面ライダーだけで戦うと?」

 戦力差は大きいが千堂も傍らの科学者も気負うような様子は見せない、少年が不思議な顔をするのは当然だった

 千堂は注がれた酒を一口飲んで、言葉を続ける

「ソウゴと名乗り、大ショッカーを復活させ治める事の出来る人間なら何人か心当たりがある……個人的にはほぼ確信しているが…証拠は無いからこの科学者以外には店の皆にも伝えてはいない」

 大ショッカーの首領の正体。それは佐藤にも魅力的な話だった

「誰なの? その心当たりってのは。勿体ぶらずに言ってみなよ」

 身を乗り出す佐藤を制し、千堂は少年の隣を見やる、千堂に釣られて隣を見た佐藤は目を見開いた。3人での席、佐藤の隣には誰も居ないはずだったが、何時の間にか1人の男が座っていた

 その男は奇妙な風体をしていた。全身黒のコートのような装いでマフラーを巻いて、手には真逢魔降臨歴というタイトルの本を持っている

「君…誰?」

 かろうじて絞り出した佐藤の質問を受けて、男は立ち上がり、大仰な仕草で一礼する

「我が名はウォズ、今はしがない歴史の観測者だ」

 

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