‥ 過ぎる痛みによる快楽判定(誤審)
これは俺にとって大問題なんですけど、太陽浴びないとキマんないんだよね。晴れが減り夜が長くなると同時に、外に出かけたり会話したりする意欲がかなり失せちゃうの。寒くて暗いの苦手。
そろそろ孤独に引きこもって精神の安寧を願いたい季節。でも何もしねぇわけにはいかないから、手始めに整体へ逝ってみました。
あのね、すごかった。
四肢が千切れ落ち四方八方に爆散した。
ただただ無力な俺は、たすけてくださいと終わらせてくださいを懇願するばかりの捕虜。
知ってましたよ。10年は放置してた右肩がガッチガチに筋肉と癒着してて、右半身が痺れるくらいひどかったのは。俺より3歳も年下の笑顔がステキなお兄さんは、
「あ〜〜……あのこれ、
痛みで目が開けられなくなると思いますが大丈夫っすか?」
としっかり警告してくれましたからね。愚かな俺は大袈裟じゃんなんてニヤつきつつ、
「はい。悪いとこが痛むって聞いたんで
根絶させる気持ちで全力でどうぞ。」
と重鎮のような心持ちで寝転んでたわけ。
おそらくお兄さんの目から光が消えたのはこの瞬間でした。悪寒。完全にルート分岐したわって思ったもん。取り返しがつかないバッドエンド選択。セーブポイントからのやり直しは?できないかぁ。
以下、阿鼻叫喚。整体師「筋トレとかしてますか?筋肉自体の締まりはいいですね〜」
おれ「そうです、か?あ?まっ なに?痛い、え?痛い!!!!!え?!!!!!!!!なんですかァ!??!?」
整体師「痛いですよね〜わかります手から伝わります〜はいはい(指圧強化)」
おれ「ワァァァァ!!!!うそ!え?!!!やめてくれない!!??なんでやめてくれねぇんだマジなんで?!!」
整体師「あ〜良いですねぇ、いま痛みを感じるほど後が楽ですからね〜」
おれ「ナンデェ!??????あっすごい汗すごい汗がでるすごい汗」
整体師「それは正常な反応なので大変良いことなんですよ〜(指圧両手押し)」
おれ「ぁ……………アハッハハァァハハッアハ(涙と汗と笑いが止まらない)」
そこから、いくら嫌がってもやめてくれない整体師の優しい「大丈夫ですよ」と、痛みの通過点を通り過ぎて声がでず白目剥いて気絶しかけた俺の「たすけてください」が奏でる地獄のハーモニー。汚ねえ和音の協奏曲。想像したくねぇだろ。俺もやだ。二度といやだ。
ただ、それだけで終わりじゃねぇんだよ。終わった瞬間に赤ちゃんよりも体が軽かったの。小石か羽くらいの感覚しかない。少し両手足を動かすだけでいつもより楽に動く。可動域が違う。人の手に委ねたら簡単に感度調整できちゃった。
そしたら、どこまでも走り出せる体力と気力が体中にみなぎってさ。俺の脳みそくんも「アレ?痛みもありでは?ありなのか?アレ?もしかして快楽だった?」ってエラー吐いてた。
整体師「じゃあまずは一週間後にメンテしたいんですけど、継続は……」
おれ「はいお願いします(調教完了)」
人はこうして溺れていく。巧みな飴と鞭に。