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春眠
┗454
454 :
柳生比呂士
2009/06/09 23:39
受話器の向こうから届く異なる音。私と貴方が同じ場所には存在し得ない事を示す証拠。唯、手先を伸ばせば叶う事も空を切る事しか許されない。
然う、“雨音”が聴こえる。懐古へと意識を伸ばして見ると其れは容易く私の中へと馴染んで、教室の窓を叩く雨粒を唯見上げて居た貴方の横顔を思い出す。憂いに帯びた表情が心の何処かに引っ掛かりを憶えてレンズ越しに映る世界は既に君色だったかの様に思える程に鮮明だった。
帰り道、偶然且つ必然に貴方は私の傘の中。肩口が触れ合わない様にと身を縮めて。時折、私を横目で見上げては対側の肩が濡れて居ないか何度も何度も気に掛ける優しさすら、──…眩しかった。
其れが何時の間にか、肩を寄せ合う様に為って狭い空間の中で触れ合う指先を繋ぎ合わせて。後々から腕を組めば御互い濡れない事を知って気恥ずかしさに視線を絡ませて一つ、笑みを零し合った。
(雨の日も然う悪くは無いのです、)
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