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Aについて。
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115 :
跡部景吾
2009/12/21 08:24
日曜。目が覚めると夕方だった。
カーテンの隙間から差し込む光を朝日だと信じて疑わなかった俺に、体内時計は存在してるのだろうか。
リビングに出るとソファにいたAから受験生である事をさりげなく労われる。妙に時間が掛かりましたねお疲れ様です、と。
アイツにしては上出来なギャグだ。
夕飯を取った後、「妙に時間が掛かりそうな」宿題諸々を片付ける為、Aに一声掛けてから自室へと戻った。
15分。…30分経過。
数学の問題集を閉じ一息ついた時、狙ったかのようなタイミングでAが部屋に入ってきた。
淹れ立てのコーヒーをペンケースの横に置いた後、俺の了承も得ずベッドに寝そべる。言葉はない。
文庫本を読み始めるAにBGMが欲しいか訊くと、『寝過ぎて後頭部だけハゲろ』とだけ返してきた。会話不成立。
1時間経過。
英語のプリントに取り掛かり始めて間もない頃、背後から『さっさと終わらせてください』と聞こえた。Aの声だ。
背凭れに腕を預けて振り返ってみたが、Aの視線は依然として悪趣味なカバーの内側に寄せられたまま動いていない。
…「天使,の囀,り」か。枕の横には「殺,人鬼,Ⅱ」
タイトルのベタさを突っ込むと、『13日の金曜日に全部刈られろ』とだけ返してきた。会話不成立。
2時間と少し。
冷え切ったコーヒーの残りをすべて飲み干した後、ベッドを振り返りAに声を掛ける。
今日の分が終わった事を伝えると、お疲れの一言も無しに、露骨に不機嫌そうな声を出した。
顔を上げたAの顰め面が、ノンフレームの眼鏡も相俟って最高にエロい。
『寝てるって解ってたら殴りに行ったのに何なんですか』
『アンタのせいで今日はイマイチな小説を3冊も読破しちまったんですけど』
『欲しい物をリストアップするから、今から全部買って来い』
『抜け毛に悩んで死,ね』
『ハゲ』
俺のAは甘えただ。
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