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Aについて。
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138 :跡部景吾
2010/06/04 22:32

四時間目の特別教室は窓際の席が割り与えられて、丁度そこからグラウンドが見えた。
日吉のクラスだ。…いや、日吉がいたから本人のクラスだと解っただけなんだが。
探そうと思ってジロジロ見てたわけじゃねえのに、あの人数から偶然日吉を見付けた俺の視力は変態的と言えるな。

…ちなみに、俺がこの偶然を経験するのは二度目だ。
前回も季節は春。俺は蛙の腹を割きながら、斜め上の世界からアイツの頭を見下ろしていた。
当時、短距離走で活躍していたアイツが、今はサッカーボールを追って走っている。
転べ、と呪いをかけてみたが、見事にバックパスを決める日吉は相も変わらず表情が薄い。
本当に生意気な野郎だな。昔も今も。

一昨年の5月。
恋人という肩書きに慣れずにいた俺は、2年F組(確かF組だった筈)な日吉の横顔を見て、ひたすらにリアリティがないと感じた。
二人きりの時とも部活の時とも違うアイツの様子は新鮮で、どこか奇妙ですらあった。

だが、今はそう感じない。
重ねた時間の中で幾度となく知った余所行きなアイツの声、表情、その全てを孕んだ存在を恋人として認識している。
当然の話だが、俺達は確かに、恐ろしく具体的に変化しているらしい。
日吉の影響で俺の語彙は変化し、俺の言葉に日吉はあまり動揺しなくなった。
ガキの頃の笑い方を思い出した後、溺れずに済むキスの仕方を二人で覚えた。
それから、

…チャイムに思考のすべてを遮断される。
窓側を振り返るが、日吉の頭は生徒の山に紛れ込み、どこにいるかもう分からない。
鳴り終えたチャイムの残響を聞きながら、永遠とはイコールで終焉なのだと不意に考える。
フラスコとピペットを棚に片付けた後、もう一度だけそこから校庭を見下ろしたが、やはり日吉はもうどこにもいなかった。

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