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昭和純情タンホイザー
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267 :
跡部景吾
2010/06/02 02:48
何が誰の丸眼鏡だ、あァん？！
波.平なら、在庫が余る位に足りてるぜ。（何処に）早く磯野家に帰ンな。
…つーか。こういうボケもツッコミも、タイミングが大事だな。
スルーすると、まァたややこしいことになンだろうからあえて触れてみたんだが、気まずいことこの上ねェェェェ！前口上もすっ飛ばして、とっとと本題にいくぜ。
# 本題 （もとい長い長い前置き。あるいは）
ややもすれば。
ぱっとしねェ天気になりがちな昨日今日、未だ梅雨は入ってねェが、じめっとじとっとした雲が近づいてくる気配がするだろ？そんな季節を先取りしてだな、既に黴でも生えてんじゃねェか、っつうような話から始めようじゃねえの。なあ、忍足。
何と3月、ホワイトデーもとっくに過ぎた月末頃の話。
放課後の部室。部誌を書いたりのあれやこれ。
珍しく忍足が雑誌を開いていて声を上げた。見せろと言えば、此方に向けられたページに銀色の、シャープなフォルムの腕時計があった。
> ンー、興味あるって程でもないけどな。これ、格好ええと思わん？
ああ、お前にしちゃ、悪くねェ趣味だな？――其れ、買ってやるよ。ホワイトデー、何も返してねェしな？
>まァな。悪くないやろ、――――……って、ハイ？
だから、その時計、お前にやる。お前が、そういう具体的な物を欲しがるのは珍しいしな。今週中に届けさせるから受け取っとけ
>……いやいやいや、それはちゃうやろ、アカンやろ。三倍返しにしたって桁一個ちゃうやん、そンな気軽に、…ってお前には気軽なんやったっけ、…いやそうやなくて、…
買ってやる、つって喜ぶ奴と嫌がる奴が居るってことくらいはよく知ってる。
例えば。要注意なのは、歳上の奴ら。歳下であるところの俺様が、何かを買ってやろうとするのが気にいらねェらしく、時には怒り出す奴もいる。俺だってエンもユカリも動機も理由もねェところで、無為に誰かのために金を使うなんてことはしねェんだが、まァ何かしら気に障るらしいな？
この時の忍足も、俺にはそういう風に見えた。
そういうくだらねえプライドをあれこれしてやる程、俺は親切じゃあねえ。普段なら、じゃあいいぜやめたっつって部室に放り出したまま帰るところだ。或いは、後日勝手に送りつけるか。
（実際に物を手にしてまで、わざわざ突っ返しにくるなんてそうはいねェ。そうだな真田くらいのもんだ！）
何れにせよ、ごちゃごちゃ言いあってんのは面倒くせェ。意固地になった忍足侑士は、もっと面倒くせェ、俺の寝室に忍び込むのが平気でもって時計をもらうのは気にいらねえとかどういう了見、…
> ――なあ、跡部。買いに行かへん？一緒に。
その矢先。矛先を変えられて、俺様は何となく口を噤んだ。
まァ、悪くねェ妥協案、だが。
期日の指定は、一ヶ月後。
（一ヶ月後？）
つまり、そういう訳で行ってきたわけだ。
それが、一ヶ月もとうに過ぎた先日の、話。
（続く）
（のか！）
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