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メフィストフェレス -Mephistopheles-
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458 :
跡部景吾
2009/04/12 22:44
>Cherry blüht
手を引かれ、連れて来られたとっておきの…秘密の場所。
並んで歩き、辿り着いた先に広がる桜は、薄暗がりの中淡く儚く。
少し離れた処へ浮かび上がるテーマパークのイルミネーションの下ではきっと、今頃花見客で賑わっているだろうに…此処はまるで週末の此の世界から切り取られたかの如く、何処迄も広がる『静寂』
薄闇の中に、二人。
片隅のベンチへ並んで腰掛け、低く、控えめに響く声。
触れる、唇。
偶にはロマンチックなデートがしたいと云う俺のリクエストを、忍足は見事演出してくれた。
毎日の様に聞かされる愛の言葉とは少し違う、掛けられたのは何度目かのプロポーズの様な。
其の、穏やかに流れる空間の、居心地が悪くて何度も誤摩化そうとするも結局は意識を強引に引き戻されて。
普段とは違う、真剣な眼差しに何とも云い難い擽ったさを感じた。
鈍感で、会話も割と噛み合ねェ。
オマケに趣味は全く被らねェし俺の話す映画やら本やら食事やらは殆どの確率で難しいだのお洒落だの。
何かアピールしても察してくれねェし偶に煽ってもスルー、其のクセ、バカだし変態だし眼鏡だし。
要するに、はっきり云って忍足は俺とは全くタイプが違うし共通点を見付ける方が難しい。
質問項目によく有る「恋人の好きな処は?」ってヤツの答え、周りのカップルはあれだこれだと微笑ましい中、残念ながら俺は『此れだ』って回答が見付からずに未だ悩む程。
(注釈として、好きな処が一つも無ェっつう意味じゃねェ、)
けど、な。
其れでも俺は…此の忍足侑士って奴に、如何やら惚れちまってるらしい。
少なくとも俺は、こんなに一人の奴に想われ、俺自身想われる事を幸せだと感じた事はねェ。
綺麗な空を見ては真っ青な画像を送って寄越し、満開の桜を見付けてはやはり其れも送って寄越す。
其れも、何度も、何度も。
「綺麗だから御前に見せたかった」と。
何時しか俺の携帯は自分で撮った写真の保存も出来ねェ程アレからのデータに埋もれ、仕方ねェからmicroSDにアレ専用フォルダを作って、今迄貰った画像達を一枚、亦一枚と保存していく始末。
其れは現在進行形で増え続けて…同時にアレへの想いとやらも確実に着実に、俺の心ン中で増え続け、占領していく。
俺がどんなに冷たく遇っても「ウゼェ」「バカ」だと罵ってもアレがめげねェのは、俺の心にしっかりと想いとやらが有るのを知っているからだと確信した、二人の記念日…10日。
今日だけは特別に、御前からの言葉を其の侭返してやるよ。
# Ich liebe Sie
恋人の好きな処は?
「俺を、好きな処。」
#(俺にとっては唯一で絶対的な事、)
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