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拝啓、愛しのペリカンウナギ殿。
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134 :
跡部景吾
2008/02/11 15:45
此の間、宍戸の家に泊まりに行った時の話。
ソレは突然アイツが「家族が揃って町内会の旅行に行っちまうのに俺一人だけ部活のせいで行けねぇ!」と言い出しやがった事に始まる。
「お前部長だろ、責任取って明日うちに一泊しやがれ!」等と訳の分からない理屈を捏ねられ、「別にレギュラーの地位に不満があるならもう部活に出なくてもいいが」やら「っつうか欠席の連絡入れりゃァ数日程度受け付けるが」やら突っ込みどころは幾つかあったが。
要は一人じゃ寂しいンだろう、っつう事が理解出来ない程俺は鈍くもねぇから仕方無ェ、アイツの我儘を通してやった訳で。
まァ偶には庶民体験も悪くねぇ、と思ったのも事実だ。
しかし、こうまで優しい俺様の心遣いにアイツときたら鳩が豆鉄砲食らったみてェな顔しやがって「…、…跡部、何か悪い物でも食ったか?素直過ぎる、ぜ」とほざきやがる。
当然ながら気の利く俺様は宍戸が俺に扱かれたい余りにバカな言動をやらかす事を見抜いてその日の部活メニューを鳳の倍に増やしてやり、自分はそんな姿を見ながら気に入りの茶葉を楽しんでやったぜ。
全く、優しい部長を持ったなァお前ら。
そうして明くる日、宍戸の家に泊まりに。
持ち物は要らないと「お泊りの栞」(宍戸の手書き)とあったが、一応礼儀として予約しておいた有名店のケーキを持参。
栞に赤字で書いてあったンで仕方無く地味な私服を用意し(それはそうだ、アイツが引き立て役になっちまうもんなァ)、寝巻きにはバスローブ。
万全の体勢をもってアイツの家の前にリムジンで乗り付けたところ、「ご近所で噂になっちまうだろうが!」と理不尽に怒られちまった。
それならヘリでも使えば良かったのか。
大体栞に書いてねぇ、と取り敢えず家の中へ。
俺の家の化粧室程だろうかっつうリビングに上げられ、アイツの勉強を見てやったり二人でゲーム対決をしたり。
そんな和やかな時間を過ごすうちに夕方になり、何か食べに行くかと尋ねたところ。
「ハ?何言ってんだよ、俺が作るぜ」
―…一瞬、時が止まった。
まるで昨日の鏡像の如く、その時の俺は間抜けな面を晒していたに違い無ェ。
「っ中学生だけで火を使ったらいけねぇだろうが!」
「其処かよ、跡部」
宍戸の家は俺から見ても仲のいい家庭だが、それゆえかアイツは母親の料理を手伝う事も多いらしく。
今日はカレーとチーズサンドだ!パーティーだ!と騒ぐアイツ。
とにかく冗談でも何でも無い様なので、俺としては宍戸の言う通り任せるより他無ェ。
すぐ隣のキッチンでチョロチョロ動き回る姿は危なっかしい気がしてソワソワしたが、「俺には俺のルールがある、だから味付けその他は任せられねぇ!」とまで意気込みを見せられちゃ手を出す訳にもいかねぇ。
暇に任せてパズルに手を出しかけた頃、「ああああああああ!」という凄まじい絶叫。
慌てて立ち上がりリビングとキッチンの境界線(言われた事は守る方だ)まで行き中を窺うと。
「…あ、跡部っちょうどいいところに!」
「な、何だ、何があった?」
覗いた先は予想していた何かが散乱したような光景も無く、さっきと同じ台所だ。
「じゃがいもがねぇんだよ!やばいことだぜ、ちょっとおつかいしてきてくれ!」
…、そうか、ヤバい事なのか。
よく分からねぇが其処まで叫ぶほどの事態なら俺はそれに応えなくちゃならねぇ。
こうして俺の「はじめて*の*おつかい~八百屋編~」が始まった。
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