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拝啓、愛しのペリカンウナギ殿。
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29 :
跡部景吾
2007/07/11 03:38
引き出しの奥に眠って居た日記帳は、思ったより多くを俺に教えてくれる。
長い年月に解けかけた弱々しい線を追いながら、古い童話を思い出した。
人間を作る材料は誰しも同じで、白い石と黒い石が半分ずつ。
白は正の、黒は負の感情。
城を作りながら、人は人になる。
どちらを欠いても完成させる事は出来なくて、白い石だけを使って作った見事な城は裏に回れば空洞だった。
分かって居るのに、彼女を想う時。
俺はやっぱり黒い石を弾いてしまうらしい。
自分の城を作る時、真っ先に手に取る其れなのに。
「彼女が俺の光なのだ」、手垢の付いた様な文句に少しだけ胸が痛んだ。
…何時も光を求めてさまようものなのかも知れねぇ。
彼や俺だけじゃねぇ、誰しも。
闇の中で頼りになるモンは光だけ、だとするなら。
目が眩む光の中で「輝く」ものは、闇に他ならないンじゃねぇだろうか。
そう思い立って手に取った黒い石を陽に透かしながら、其れが綺麗に磨かれて居たらいいとぼんやり考えた。
さぞかし美しいだろうと。
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