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拝啓、愛しのペリカンウナギ殿。
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364 :
跡部景吾
2012/08/29 15:02
薔薇園で杏と会う。
折角の御要望だったが、流石にこの暑さでは見応えのある花は見られなかったのが残念だ。薔薇は夏に弱い花だからなァ。
因みに要望の一つ目は薔薇園に行く事、もう一つは薔薇の花束。色は悩んだが、杏の好きなピンクを。温室咲きしか用意出来なかったのが残念と言えば残念な所だ。初夏か秋の、薔薇の盛りだったら良かったンだがな。代わりと言っては何だが、屋敷の薔薇園をプレゼントした。丁度去年、俺が温室にキングサイズのベッドを入れたばかりだ。天窓から星が見えるンで、悪くないぜ。
ピンクの薔薇の花言葉は色々あるが、「美しい少女」。
喜ぶかと思って教えてやったが反応は今一つだったな。「何時になるか」と言っていたが、俺は御前に似合いの花言葉だと思って選んで来た心算だ。
此の間の時計も早速身につけていたが、似合ってたぜ。
俺の写真を撮ると言う杏の希望は勿論汲んでやったが、あまりにも携帯ばかり見てやがるから途中で取り上げた。実物の方がいい男に決まってンじゃねえの。
写真は古くなる。「実物」が古くなると言う奴も居るが、俺に関しちゃ常に「今」が一番輝いてる様に生きているンで其れは無い。つまり老人になった頃、俺が人生で最も美しい時期を迎える計算だ。どんな生き方をして来たかッつうのは、きっと俺の皺に刻まれていくだろうからな。
…会話の内容は書かずにおこうと思ったが、猫に宜しく伝えて欲しいと言われた事だけ。
次回こそ俺の贈ったドレスを着てくれると期待してるンで、何処がいいか。芝居でも観に行くのも良いが、まァ杏の行きたい場所が有れば叔父様は其処に合わせるぜ。今日も有難うよ。
…そう言えば薔薇園には、プラシシとも行った事があったな。あの時は確か帰る前に、枯れた白薔薇を貰った。「生涯を誓う」と書かれた文字に笑った覚えがある。薔薇の嫌いな姫君が、否が応でも頭に浮かんだ。
俺のこの感情は本当に、呪いなのかも知れねえ。どうか百年の眠りに就いた姫が、目を覚ました時に寂しくねえ様に。その一瞬の為ならば、百年間一人で待っていてもいい。――どんなに寂しくてもいい。
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