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月時雨に詠う
┗199
199 :
跡部景吾
2011/07/09 20:22
年一度、限り有る逢会。
蒼い月が、緩りとオペラモーヴの花束へ擦り変わる。
迎えが来た、と御前は微笑う。
気の遠く為る幾度を唯、其の願いに捧げた末の念願成就らしい。
鼓動が伝わる位置に対峙為てる筈の御前に、伸ばしても伸ばしても届かない指。嗚呼、と。
幸せに、と見送らねェで如何為る?
――何時も長々し夜、御前の腕に居る事さえ儘為らねェ。振り回すばかりで優しい御前の、負担に為ってンじゃないか。
御前の聲を、探す刹那すら一瞬躊躇う始末だ。
其処に在る、言葉が怖くて指が震える。
煌めく人工画面に視界が煙る処で、目ェ醒めて。
眦を濡らす正体は、汗なンだと頑に思い込んだ七夕の儚き梦明け。
冷えた汗だかなンだかに、小さく小さく怯えた。
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