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Lily.
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104 :
日吉若
2009/06/14 02:57
報われないことなんざ、最初から分かっていた癖に。
──…馬鹿な男!
〔 Honeycomb 惰*性*愛*撫 〕
少し前の時期の話。
(花の枯れた今だからこそ、)
躑躅に囲まれた図書室の、窓を挟んで外側の壁に寄り掛かって読書に励むのを好みとしていた時があった。紫と白の花に包まれし其の場所は他からは見え難く、口寂しく成れば花を一摘み、蜂に紛れて蜜を吸うことだって出来た。
壁に背を張り付けて仕舞えば図書室内からは見えず、此方からも中を窺うことは出来ない。そんな場所で時間を潰していた或る日、聞き慣れた友人の声はまるで部活の先輩が好んで読む本の種類に出て来そうな種類の陳腐な甘い科白を紡いでいた。最初は、…最初は、ゴメンと謝っていたから気付けなかったんだ。言わなくたって良かった筈だ。俺達は其の為に(主に意識をはぐらかす為に)、迂遠な口調で友人付き合いをしてきたのじゃないのか。
ごめん、なんて謝ってまで好きだと伝えることに何の意味が在る。何時の間にか頁を捲る手は止まってしまっていて、同じ行ばかりを目で追ってしまうことに眉を顰めながら柄にも無く震えた声が多分本当に、と繰り返すのを脳内でリピートして憎らしく思っていた、ら、唐突に頭上の窓が開いた。何の本を読んでいるのなんて言いながら大分低い位置に在る俺の肩に額を寄せる奴の後頭部に掌を乗せて、思う。
俺達は如何したってオトコノコだ。世界に落とされた時から其れは変わらないし、だからこそ如何にも成らないことだってある。温かいとか冷たいとか、感じるのは同じ器官であるけども咲かせたい花の種類は違うこともある。そういうことだ。
…きっと何も無かったかのように。明日もまた教室で三人、一つの机を囲んで会話を交わすんだろうと、躑躅の花弁に秘密を預けながら肩への接吻を受け止めた。
(それでも洩れる嗚咽と、告白をした時の声はよく似ていたと今でもよく思い出す。)
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ゴメン、の中に秘めた想いは。
少しでも彼に伝わったのだろうか。
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