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Lily.
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119 :
日吉若
2009/12/31 23:50
小さな頃から、母が着物を縫う姿を眺めているのが好きだった。
形を成さない唯の布が、段々と形を整えて往く姿は美しく、彼方へ此方へと動く白い手の甲が光を反射するのは視ていて心地良い。
布を縫うのが好きだと云う母は、今年は朱い長襦袢に黒の着物を完成させて、手渡してくれた。
黒い生地に陰翳で浮かび上がる鳳凰の羽根をなぞる。
母は祖母から着物の縫い方を教わったと、少し照れたように唇の端を緩めた。
祖母と母の手の動き、は、良く似ていると思いながらふたり糸を操る仲睦まじい姿を横目に炬燵の卓上に顎を乗せた。
(喩え暦が変わったって、何かが変わる訳じゃなし。)
来年も、如何か、…──
‐‐‐
今だからの、懺悔。
今年こそはと集会と云うか、ちょっとした集まりに一回でも顔を出してみようと決めていたのに、結局顔を出すこと等出来なかった。
行ってみるかなあと幾度か思いながら、次こそは次こそはと先延ばしにしてしまって果たせず終い。
でも今年、人と余り交流が無いのは君にとっても未だ視ぬ誰かにとっても勿体無いことだと口にしてくれる奴が居た。
俺が何時か慾しがった、"そういうひと"は近くに居たのだなあと漸く実感、出来て。
沢山の優しさを感じた一年でした。
誰かにとっての悪人は、必ずしも他人にとっての悪人には成り得ない。
詰まりは、そういうこと。
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