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╂ヤマト男児への道╂
 ┗21

21 :丸井ブン太
2007/11/26 00:00

#            『席』

今日の出来事。
それは、部活帰りの電車の中で起こったおハナシ。

油ギッシュなサラリーマンのおじさんの隣に座っていると、降りる四つ前の駅で一人のおばあちゃんが乗車してきた。
おばあちゃんはそれはもう鬼のような形相で、何かを呟いている。

#「最近の若者は謝りもしないで」
#「あー痛い痛い」

どうやら若者とぶつかったらしい。
俺はなんとなく気持ちだけでも労ろうとおばあちゃんに視線を送った。



>…目が、合っちまった。
それはもう男と女の間に恋が芽生える時のような瞬間だった。

目が離せない。
だけど、ここで何事もなかったかのように目を逸らしたら、「今の若者は席も譲らないで」とおばあちゃんを更にガッカリさせちまうんじゃねーのか?
俺はそう思って、日本の若者の看板を背負って、おばあちゃんに歩み寄った。


#「席、どうぞ」
俺がぶっきらぼうにそう言うと、おばあちゃんは一瞬目を見開いた。

>フッ、若者の株が上がったな。チョロいチョロい。
俺がいやらしくそう考えていると、おばあちゃんは今までの怖い顔付きからは想像もできねェ綺麗な笑顔を見せた。
そして、こう言った。



#「ありがとう。でも、お兄さんも部活帰りで疲れてるでしょう?気持ちだけで十分ですよ」



…おばあちゃん。
俺は、自分が恥ずかしくなった。
いつも損得で動いて、人を外見だけで決め付ける自分に。


おばあちゃんの優しさに、ふと目頭が熱くなるのを感じてとっさに上を向いた。
涙が、零れないように。

そんな俺を見て、またおばあちゃんがフ…と優しく微笑んだのを感じた。



#「それで、お兄さんはいくつなの?」



おばあちゃんは言った。

俺がつい先程まで、座っていた席へ腰掛けながら。



それでも、俺は優しい気持ちになれたので、笑顔でこう返した。

#「中3です」






そんな俺とおばあちゃんの、生暖かい物語。

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