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╂ヤマト男児への道╂
┗311
311 :
丸井ブン太
2008/09/09 18:00
# 『蜘二』
#「…出ていけよ」
部屋に入ってすぐ、視界に入ったソイツに向かって俺は言った。
だけどソイツは赤いシーツの上を陣取って離れない。
まるで俺を見下しているように見えて、ムカついた。
ムカついたから叩いた。
アイツは一瞬驚いた様子を見せたけど、すぐに怒って俺に食ってかかってきた。
急に飛び付いてきたから、思わず腰を抜かして尻餅をついちまった。
情けねぇし、ケツが痛ェ。
だけどここで引き下がったら、俺達の縁はいつまで経っても切れねぇと思った。
今まで、見て見ぬ振りをしてきちまったのが悪いんだ。
お前に同情して、追い出せなかった俺が。
もう、待つだけの生活は嫌だ。
時々見えなくなるお前を、次はいつ帰ってくるんだろうとソワソワして、何日も過ごした。
帰ってきても、またフラリと何処かへ消えてしまうお前に、いつしか不安だけが募っていった。
もうこんな生活は、耐えられねぇ。
我慢しないと情けねぇ声が出そうだったから、唇は終始噛み締めたままだった。
なんとかソイツを玄関まで追いやって、最後に見つめ合ったまま別れを告げた。
#「好きに生きろよ」
玄関の扉は俺が開けてあげた。
アイツは少しだけ躊躇したけど、ゆっくりとした足取りで俺の家を後にした。
明日からアイツが俺の部屋を我が物顔で歩き回る事はもうないと思うと、少しホッとして、でも寂しくて、アイツの後ろ姿が涙で霞んだ。
#「…逞しく、生きろよ」
それから見えなくなるまで、俺はずっと後ろ姿を見送り続けた。
# 今日まで同居していた
# 蜘蛛に捧ぐ。
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