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╂ヤマト男児への道╂
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494 :
丸井ブン太
2009/06/17 23:00
# 『黒蜂』
さっき来たメルマガに、
>今日はにおうデー!
って書いてあったんだよ。
だからすぐ仁王にメールしてやったんだ。
[TO]仁王
[件](non title)
――――――――――
誕生日おめでと!
(ケーキとクラッカーの絵文字付き)
したらすぐ返事きてさ。
[名]仁王
[件](non title)
――――――――――
俺の誕生日半年先。
おっかしいなーと思ってメルマガに貼り付けられたURLに飛んでみると香水特集がやってた。
仁王デーじゃなくて匂うデー。
ふざけんなよ、紛らわしい!
仁王に誕生日覚えてねぇ事バレちまったじゃん。ま、いっか。あいつが心の広い男である事を信じるぜ。
>匂いと言えば俺の部屋は蜂蜜の匂いでもすんのか?
入り込んだんだよ、蜂が。
しかも黄色と黒シマシマの可愛いヤツじゃなくて、黒一色のいかにも危険そうなヤツ。
最初はハエかと思ったんだけど、ハエにしては動きが鈍いしなによりシュッとしたスリムなボディ、こいつは蜂だと直感的に感じたんだ。
そこからはアイツと俺との1対1の戦いが始まる。
俺は窓を開けた後壁に寄りかかり、デスクを這うアイツを見下ろしてこう話し掛けた。
#「この部屋にお前の探し求めてるモンはねぇよ。そろそろ家に帰ったらどうだ。お袋さんが待ってるぜ」
#(訳:さっさと出ろよ!何してんだテメー!)
それでもアイツはお袋さんに合わせる顔がねぇのか席を立とうとはしなかった。
その代わりに置きっぱなしだった俺の携帯電話に触れる。
#「電話を掛けてぇなら好きにしな、傷は付けんなよ」
#(訳:ああ!俺の携帯!)
けどアイツは電話を掛ける勇気がなかったのか、すぐに手を離して項垂れた。
こいつも此処に辿り着くまで色々あったんだろうな。
そんな事を思いながら見守っていると、次にアイツは机の上のクッキーへ手を伸ばす。
#「フ、腹減ってんの?いいぜ、食いな」
#(訳、現実:俺のクッキー!)
俺がそう言って穏やかに微笑むとアイツも微かに笑った気がした。
そして勢いよく席を立つ。
向かう先は知っていた。
あの青々とした空へ向かって、アイツは羽ばたいていったんだ。
帰っていった。
俺はアイツの背中が見えなくなるまで見送って、そして静かに窓を閉めた。
もう聞こえないとわかっていながらもアイツへの気持ちが零れ落ちた。
#「達者でな」
#(現実:もう戻ってくんなよ!)
風が洗濯物を揺らした。
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