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予定調和
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16 :
滝萩之介
2007/11/17 12:36
―――嗚呼、此れは。
父様の車の、エンジンの匂い。
父様の吸う煙草よりも、僕はこの香りが好き。
他の自家用車にはない、独特の香り。
どうして?やはり、外国製のものだから?
もしそうだとしたら、異国はこの素敵な匂いで溢れているのかしら。
エンジンは唸りをあげて、ガスを蒔いて。
駐車場から一番遠い僕の部屋まで、届く。
ねぇ、父様、出掛けるの。
部屋を出れば公道に見慣れた車体。
窓から覗く、父様のかんばせ。
見送りの挨拶は、物心ついたときから変わらない。
行ってらっしゃい、お父様。
人差し指を振って、小さくなる鉄塊を見ていた。
あの、カァブを曲がって、消えてしまうまで。
今日もとても暖かい。
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